Warning: Undefined variable $author_name in /home/cytokine2/knee-pain.jp/public_html/wp-content/themes/xeory_base_knee-pain/functions.php on line 1221
「変形性膝関節症と診断されたけど、運動療法って本当にいいの?」運動がいいとは耳にはするけど、実際に効果があるのかは疑っている人も少なくないよう。それは、なぜ運動するのかという理由がよく分かっていないからではないでしょうか。
そこで、実際に得られる効果や、なんのためにやるのかといった目的をまとめました。さらに、実際に治療現場でリハビリを指導するメディカルトレーナーが、おすすめの運動を厳選してご紹介! 読めば目的と行動がつながって、より効果的な運動治療が行えるはずです。
運動治療がもたらす変形性膝関節症への効果
運動は、れっきとした変形性膝関節症の治療法のひとつです。ただ、冒頭であげたように、運動治療について半信半疑の人も少なくありません。そんな人に多いのが、「治療する=損傷した軟骨が修復する」と思われているケース。残念ながら運動治療に限らず、現在主流の治療法のどれも、軟骨を修復する効果は見込めません。目的は、症状をいかに進行させず、緩和するか。それによって、日常生活の行動をいかに改善するかなのです。
この目的において、運動治療は有意義な治療法と言えます。実際、今回ご紹介するのと同意義の方法で治療を行ったところ、変形性膝関節症の膝の痛みや日常生活の行動障害が運動開始1ヵ月目から軽減されたという報告も。分かりやすくまとめると、下記のような効果が期待できます。
【参考文献】
「変形性膝関節症の治療としてのリハビリテーション : 運動療法ホームエクササイズの効果」黒沢 尚/リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 42(2), 124-130, 2005-02-18
変形性膝関節症の進行を防ぐ
膝への負担が増すことで変形性膝関節症は進行します。その進行を防いで症状を悪化させないためにも、膝周辺の筋力がとても重要。なぜなら、膝へかかる衝撃を筋力でカバーしているからです。変形性膝関節症を発症しても運動して筋力を保ち、初期症状で食い止められれば、健康寿命がその分長くなります。
変形性膝関節症の症状の改善
進行具合にもよりますが、膝の痛みやこわばり(膝を動かしづらい状態)といった、悩みの元凶とも言える症状を改善する効果が得られることも少なくありません。実際に先に触れた報告では、痛め止めの内服薬に勝るとも劣らないことが実証されたとのことでした。
手術後の膝のトラブル予防
人工関節置換術などを行う場合、手術に向けた準備としても運動はおすすめ。術後の安静で筋力が落ちることも考えられるからです。それによって膝に違和感が生じ、せっかく手術したのに満足度が低くなることもあり得ます。もちろん術後のリハビリでも筋力を取り戻すプログラムはありますが、事前に運動しておいた方が、術後のリスクは軽減されるでしょう。
【4つの目的別】変形性膝関節症に有効な運動治療法
変形性膝関節症を予防・改善するためには、どういった点がポイントになってくるのか。それが運動の目的にも通じます。
運動の目的1:膝の前後の安定を高める
変形性膝関節症の代表的な症状に、膝の不安定さがあります。この不安定さによって、スターティングペイン(動き始めに膝が痛む症状)が起こることも。この不安定さの要因のひとつに、膝の縦の動きを支配する大腿四頭筋の筋力があげられます。つまり、膝の前後の安定性を高めるためには、大腿四頭筋のトレーニングが重要なのです。
大腿四頭筋の運動
変形性膝関節症の場合、膝へ負担をかけることなく筋力を鍛える必要があります。その場合に有効なのが、セッティングという運動方法。関節を動かさず、筋肉だけを収縮させる運動です。
- トレーニングする足を伸ばして床に座ります。
- コンパクトに丸めたバスタオルを、伸ばした足の膝より少し上(太もも下)に敷きます(※1)。
- つま先を天井に向けて立て、タオルをつぶすように膝を伸ばします(※2)。
- この状態を5~10秒キープ。連続して5~10回という運動を1日3セットを目標に行います。
※1:膝が伸びきらない人は、膝より少し下のふくらはぎあたりに敷きましょう。
※2:このとき、太もも前面の内側部分(内側広筋)に力を入れるよう意識するのがポイントです。
運動の目的2:膝の左右の安定を高める
変形性膝関節症による膝の不安定さは、左右にも生じることがあります。これには、骨盤の歪みが関係しているんです。骨盤の歪みは足のアライメント(関節の並び)全体を崩し、O脚やX脚を引き起こします。そう、膝関節の内や外のどちらかに負荷がかたより、安定しません。この重要な骨盤を正常に位置づける筋肉のひとつが、中殿筋。お尻の外側にある筋肉を鍛えることが、膝の正常なアライメントには大切です。
中殿筋の運動
中殿筋の筋トレは、膝痛の人でも無理のない体勢で行うことができます。また、自分の体重を利用した自重トレーニングなので、膝を動かすことなく、多くの人にとって実践しやすい点が特徴です。
- 鍛える方の足を上にして、横向きに寝そべります。
- 骨盤がまっすぐ立ったまま動かないように、体勢を整えます。
- 上の足の膝を伸ばしたまま、できる範囲で足をゆっくりと上げ下げします。
- こちらも5~10回の1日3セットを目標にしましょう。
運動の目的3:膝の可動域を広げる
膝の可動域とは、膝の曲げ伸ばしができる範囲のこと。膝が伸び切った状態を0度として、歩くときには60度、しゃがむときは100度、正座では150度に膝が曲がらないとこれらの行動、姿勢はできません。つまり、膝の可動域が狭まることで、日常生活に支障が出るというわけです。変形性膝関節症では、この膝の可動域が制限されるようになるため、それを予防・改善する運動は必須と言えます。
膝の引き寄せ運動
この運動は、可動域が広がりやすい状態にすることと、より膝に負担をかけないで行うためにも、膝が温まった状態で行うことがおすすめです。事前に蒸しタオルで膝を温めたり、お風呂の湯船につかった状態で行うと良いでしょう。
- 仰向けで寝そべった状態で行います。
- 可動域を広げたい側の足の膝を曲げつつ、上半身の方へ持ち上げます。
- バスタオルをすねに掛け、踵をお尻につけるように引き寄せましょう。
- 無理のないところで5秒キープする運動を、連続で5~10回。1日3セット行います。
※バスタオルがなくてもできる人は、両手で足のすねを持って行いましょう。
運動の目的4:膝を伸ばす
変形性膝関節症では痛みの他に、膝が伸びきらないという症状にお悩みの人も多いはず。これを改善するためにはストレッチが有効です。なぜなら、膝の曲げ伸ばしは、筋肉の収縮運動によって行われているから。筋肉が柔らかいと、その運動の範囲も広がりますし、スムーズに行えます。
膝が伸びない症状を改善するストレッチについては「【膝が固まって伸びない人へ】3タイプのストレッチを動画解説」でも様々ご紹介していますが、ここでは代表的なものを1つご紹介しましょう。
ハムストリングのストレッチ運動
太もも裏のハムストリングの柔軟性を高める運動は、膝の伸展を高める上で欠かせません。なかでもご紹介する方法は、筋肉が硬い人でも無理のない体勢で行うことができます。
- ストレッチをかける足を半歩前に出します。
- 股関節から折り畳むように、体を前に倒します(※1、2)。
- このとき、後ろの足の膝を軽く曲げるとやりやすいです。
- 太ももの裏側が伸びているのを感じるところで、20〜40秒キープ。
※1:背中が丸まらないよう、膝が曲がらないよう注意しましょう。
※2:もし膝が曲がる場合は、体を倒す角度を浅くしても構いません。
変形性膝関節症に運動治療がなぜ大切か?悪循環も……
膝が痛いということで、運動はおっくうかもしれません。また、日常の行動でも、痛みをかばって動いているのではないでしょうか? しかし、この行動は膝の痛みが増してしまう悪循環をつくります。逆に運動を積極的に行うことで、良い循環を生み出すことが可能です。
運動をしないことで起こる膝への悪循環
先にも言ったように、変形性膝関節症になると膝のこわばりや痛みなどから、過度な安静をとったり、そういう意識がなくても動く機会が少なくなったらいしがちです。しかし、使わなければ筋肉は衰えてしまいます。すると、膝への負担はもちろん増加。軟骨のすり減りなど、膝関節内のダメージは進行し、違和感や痛みといった症状はますます悪化することになるでしょう。
そう、少ない動きで効果的な運動を取り入れなければ、すぐに負のスパイラルから抜け出せなくなってしまうのです。
運動治療がもたらす膝への良い循環
変形性膝関節症の悪循環を見ると、筋力低下がターニングポイントであることが分かります。筋肉の重要性は、運動治療の目的を見ても明らか。筋力を維持できれば、膝の動きの改善が期待できるわけですから。また、膝関節への負担も軽減されます。これにより、膝の痛みが減少したり、膝を動かしやすくなることが予想可能。運動することも苦ではなくなり、さらなる好循環が見込めるのです。
一次的に症状が改善されることも嬉しいことですが、この好循環に持ち込むことこそ、変形性膝関節症における運動治療の真の目的と言えるでしょう。
変形性膝関節症の運動治療の大前提
運動治療を実践する場合は、下記の2点を理解した上で始めて下さい。
変形性膝関節症の運動治療では「筋持続力」を鍛える
筋力に重きを置いてお話してきましたが、変形性膝関節症の運動治療では筋力の中でも、筋持久力を意識することが大切です。筋力を筋肉の収縮によって発生する瞬発力とすると、筋持久力は長く筋力を発揮させる力のこと。日常生活では、大きな力を一次的に発揮するシーンよりも、そこそこ筋力を使う動きを1日持続させることの方が多いですよね。そのため、筋持久力を鍛えることを認識しておきましょう。
この認識がなぜ必要かと言うと、筋力と筋持久力では鍛える方法が異なるからです。筋力は瞬発力ですから、少ない回数でも負荷が大きければ鍛えられます。しかし、筋持久力は逆。小さな負荷でいいので、回数をこなすことが大切です。
変形性膝関節症の運動治療は医師の診断後にスタート
運動が膝にもたらす好影響は揺るぎないものです。特に、変形性膝関節症の予備軍や初期と診断を受けた方は、積極的に行うべきだと考えます。ただし、変形性膝関節症の進行具合や膝の状態によっては、運動が適さないという場合もあります。例えば、膝の炎症が強い場合、腫れている場合などは、逆に症状悪化につながってしまうことも……。自己診断でスタートせず、まずは整形外科を受診して、医師と相談しながら進めましょう。