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変形性膝関節症の痛み緩和や進行の予防のため、筋肉を鍛えないといけないことは分かっているけど、多くの人はこんな疑問をお持ちのようです。「どこを鍛えればいいの?」「効果的な筋トレ方法ってあるの?」そんな方にぴったりの情報を、今回はご紹介しましょう。
筋トレのような運動が、変形性膝関節症にどのような効果を与えるのかを始め、鍛えるべき筋肉とその理由も交えて具体的なトレーニング方法をメディカルトレーナーが解説します。正しくやらないと悪化するかもと不安な方も、動画で実際の動きを確認できるので、取り入れやすいはずです。レッツトライ!
変形性膝関節症で筋肉を鍛えると良い理由
変形性膝関節症には、加齢や肥満などいろいろな原因がありますが、筋力の低下もそのひとつ。膝関節は体を支える重要な部位なので、加わる負荷が大きいと言えます。また、日常の動作での膝の動きは必要不可欠。その膝の動きを担い、衝撃が軽くなるようアシストしているのが、筋肉です。そのため、運動不足で筋肉が衰えれば当然、膝関節への負荷は大きくなり、ダメージを負いやすくなります。加齢が変形性膝関節症の危険因子にあげられるのには、筋力低下も関係していますし、変形性膝関節症患者に女性が多い理由のひとつは、男性よりもともと筋肉が少ないから。つまり、筋肉を鍛えることで膝関節を守ることができ、変形性膝関節症の痛みの緩和や進行の予防につながるのです。
適度な運動がしやすくなれば、炎症抑制の可能性も
筋肉を鍛えることに限らず、変形性膝関節症では適度な運動が治療のひとつとなります。というのも、軽いジョギングや早歩きのウォーキングを適度に行うことで、炎症が抑えられると言われているからです。実際に研究報告もあります。健康な成人男女47名で20分間のトレッドミル(ランニングマシーンなどの健康器具)を使った運動後に血液検査を行った結果、炎症に関係する免疫細胞が5%減少していたそうです(参考文献1)。
ただ、運動の負荷がそれほど大きくなくても、筋力が低下していれば膝にダメージを与えかねません。もしくは、炎症抑制に有意義な運動もできないかもしれません。運動療法を行うためにも、まずは筋力が必要というわけです。
ちなみに、単に運動の負荷をあげれば、炎症を抑える効果も高まるというわけではありません。むしろ、それは逆効果。筋肉を鍛える際にも、痛みを我慢してまで行うことは避け、可能な範囲から始めましょう。
【参考文献1】
「Inflammation and exercise: Inhibition of monocytic intracellular TNF production by acute exercise via β2-adrenergic activation.」Dimitrov S, et al. Brain Behav Immun. 2016 Dec 21.
変形性膝関節症に関係する筋肉とそのトレーニング法
膝関節の動き、そして痛みには、本当に様々な筋肉が関係しています。なかでも最も重要なのが、太ももの筋肉。それも、太ももの前側や後ろ側、内側といった筋肉の位置によって膝関節との関わりが異なるため、変形性膝関節症のリハビリや運動療法では、きちんと分けてアプローチすることが基本です。
そして、ふくらはぎ。太ももを重視することは間違いではありませんが、ふくらはぎも可能ならば同時に鍛えて膝関節をサポートしたいところ。さらに言えば、お尻の筋肉も捨て置けません。ということで、これら主要な5部位のトレーニング法を動画でわかりやすく解説していきましょう!
膝を伸ばすために働く太もも前側の筋肉
太ももの前側の筋肉を、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)と言います。その名の通り、大腿直筋(だいたいちょっきん)、内側広筋(ないそくこうきん)、外側広筋(がいそくこうきん)、中間広筋(ちゅうかんこうきん)の4つの筋肉の総称。これらの筋肉はひとつひとつが大きいため、筋力が落ちないように鍛えるのも大変ですが、その分、膝関節に関わる率もNo.1の重要な筋肉です。
大腿四頭筋の役割は、まず膝関節に加わる負荷を受け止め、軽減することです。つまり冒頭で触れたように、軟骨や半月板など、膝関節内の組織へダメージが加わらないようサポートしています。また、膝を伸ばす動作の主力の筋肉なので、大腿四頭筋が衰えると膝が動かしづらくなってしまうことも……。ただ逆を言えば、大腿四頭筋の筋力を維持すれば、日常生活への支障も防ぐことができるし、ウォーキングや自転車などの運動療法もスムーズに行えるというわけです。
大腿四頭筋のトレーニング法① セッティング
高位脛骨骨切り術や人工関節置換術といった、変形性膝関節症の手術後でも、大腿四頭筋のトレーニングはまず最初に行うリハビリ運動のひとつです。そんなケースで鉄板と言えるのが、セッティングと呼ばれるこちらの筋トレ法。座った体勢でできるので、変形性膝関節症の人にはもってこいの方法と言えるでしょう。テレビを見ているときや、寝る前などに気軽に取り入れてみてください。
- 丸めたバスタオルを用意し、手術した足を伸ばして座ります。
- 膝が伸びきる人は膝のお皿より上の太もも下に、伸び切らない人はお皿より下のふくらはぎ下にタオルを敷きます。
- つま先を天井に向け、タオルをつぶすように、太もも前面の内側に力を入れ、5〜10秒キープ。
- これを連続で5〜10回、1日3セットが目標の目安です。
大腿四頭筋のトレーニング法② エクステンション
セッティングに並んで、もうひとつの大腿四頭筋の代表的な筋トレ法がこちら。エクステンションと呼ばれるトレーニング法です。フィットネスジムでは同じ動きでも、足先をトレーニング機器にひっかけて、おもりの負荷をかけて鍛えたりしますが、変形性膝関節症の人が筋力を維持するために行うなら、自重でも十分効果が得られます。
- 椅子にすわった状態で、片足ずつ行います。
- まず2秒間かけて膝がまっすぐになるよう伸ばしていきましょう。
- 次に、同じく2秒間かけて膝を曲げ、足を下ろします。
- 膝が伸び切らない人や曲がりづらい人は、無理のない範囲で構いません。
- 1日合計100回くらいが目標となります。
膝を曲げるために働く太もも裏側の筋肉
変形性膝関節症に対しては、大腿四頭筋に並ぶ重要な意味を持つ筋肉が、太もも裏側のハムストリングスです。3つの筋肉の総称で、大腿二頭筋(だいたいにとうきん)、半腱様筋(はんけんようきん)、半膜様筋(はんまくようきん)からなります。
大腿四頭筋が膝を伸ばす筋肉なら、ハムストリングスはその逆。膝を曲げる動きを担います。例えば歩くとき、通常なら足が着地したら衝撃を和らげるために膝を曲げる動きを行います。ですが変形性膝関節症は、膝が曲がらなくなる人も多く、この動作ができない人も多いのです。これでは、膝への衝撃が大きくなってしまい、膝痛の悪化、さらには腰痛も引き起こしかねません。ハムストリングスの筋力低下だけが原因ではありませんが、改善するためには太もも裏を鍛えることがひとつの方法と言えるでしょう。
ハムストリングスのトレーニング法① レッグカール
寝そべった体勢でできる筋トレ法なので、膝関節への負担もそれほどかかりません。寝る前の習慣にできるといいですね。自重だけでも効果は得られますが、まだ膝の痛みがそれほど強く出ていない人でより負荷を求めるなら、足に水を入れたペットボトルやダンベルをはさんで調整できます。
- うつ伏せになり、両足を揃えたまま、かかとをお尻につけるように膝を曲げます。
- 太ももの裏側に力が入るよう意識しましょう。
- 膝を曲げるときに、お尻が浮かないように注意してください。
- 3秒かけて膝を曲げ、3秒かけて戻す運動を10回。1日3セットを目安に行います。
膝を安定性を左右する太もも内側の筋肉
歩くときに膝が外にずれるような違和感があるなら、太もも内側の筋肉、内転筋群(ないてんきんぐん)のトレーニングをおすすめします。この膝が外側にずれる違和感は、ラテラルスラストという膝の横ぶれ現象。歩行において、前に踏み出した足が地面に着いて後ろ足が離れたとき、つまり全体中が片足に乗ったときにに起こります。原因はO脚なので、変形性膝関節症の人に多い膝の違和感なのです。
内転筋群はO脚の大腿骨の外旋(外側に回転する動き)と脛骨の内旋(内側に回転する動き)を制御する筋肉のひとつ。そのため、鍛えることでねじれを改善して、膝を安定させることにつながります。
内転筋群のトレーニング法「アダクション」
内転筋群をピンポイントに鍛える方法は、知らない人も少なくないのではないでしょうか。ただ、こちらも横になった状態で行うため、膝への負荷は最小限。足をあげる高さも、可能な範囲で大丈夫。続けていれば、少しずつ高くあげられるようになるはずです。
- 横向きに寝そべり、下の足を伸ばし、上の足は膝を曲げた体勢からスタート。
- 下にある伸ばした足をゆっくりあげていきます。最初は10cmくらいで構いません。
- このとき、上半身の姿勢が崩れたり、あげた足の膝が曲がらないよう注意しましょう。
- 3秒かけて足をあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットが目安です。
歩行や立ち上がりをサポートするお尻の筋肉
お尻の筋肉には、単一の筋肉の中で一番大きな大臀筋(だいでんきん)の他に、中臀筋(ちゅうでんきん)と小臀筋(しょうでんきん)があり、これらを総じて臀筋群(でんきんぐん)と言います。これらお尻の筋肉は、内転筋群と同じく、膝を安定させる働きがまずひとつあります。そのため変形性膝関節症においては、内転筋群と一緒に鍛えるとより効果的でしょう。
また、お尻を持ち上げるためにも必要な筋肉です。椅子から立ち上がるときなどの膝の痛みやこわばりを改善するには、臀筋群を鍛えて膝への負担を軽減させることがひとつの方法となります。
臀筋群のトレーニング法「アブダクション」
お尻を鍛える方法は他にもありますが、こちらも膝への負荷が少ない方法をご紹介しましょう。横になって足を上げ下げする運動で、エアロビと言えばこれ、というイメージを持っている人もいるのでは? 正しく行えば、お尻の3つの筋肉を効率よく鍛えることができます。内転筋群のトレーニング同様、足をあげる高さはできる範囲で構いません。
- 上から見たときに、頭・肩・骨盤・膝・足首が一直線になるよう、横向きに寝そべります。
- 膝を伸ばしたまま、上にある足のかかとを天井に近づけるイメージであげていきます。
- 腰が反ったり、膝が曲がったり、つま先が天井に向いたりしないよう気をつけましょう。
- 3秒かけて足をあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットを目安に行います。
歩行時の膝痛に関係するふくらはぎの筋肉
しっかり歩く動作のカギとなるのが、ふくらはぎです。ふくらはぎには、ヒラメ筋と腓腹筋(ひふくきん)という筋肉があります。ヒラメ筋はアキレス腱とつながっていて、歩くときに地面を蹴るという力を発揮。腓腹筋はふくらはぎと言っても膝にまたがる筋肉で、膝を曲げる動作に貢献しています。
そのため、膝に力が入らず歩きにくくなったり、歩くスピードが落ちたりする原因のひとつに、ふくらはぎの筋力低下が考えられるでしょう。また、膝を曲げる動作も担うので、ここの筋肉が衰えると正しく歩けなくなったり、立ち上がりがスムーズに行かなくなることも。太ももばかりではなく、ふくらはぎもバランス良く鍛えて、正しい動作の維持を目指しましょう。
ふくらはぎのトレーニング法①「カーフレイズ」
今回ご紹介した筋トレの中では、唯一、立って行う方法がこちら。ただ、ぐらつかないよう椅子や壁で支えるので、変形性膝関節症で膝が痛い人にも、比較的無理なく行えるものではないでしょうか。実際、人工関節置換術などの手術後のリハビリ運動としてもよく行われる筋トレ法です。
- 壁や椅子に手を置き、立った状態を安定させて行います。
- 膝を伸ばしたまま、かかとをゆっくりあげていきましょう。
- 3秒かけてあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットが目安となります。
- 膝を曲げて行うと、ヒラメ筋のトレーニングにもなります。
変形性膝関節症で筋肉を鍛えるときの注意点
変形性膝関節症と診断された人が筋トレを行う場合は、次のことに気をつけて行ってください。
筋トレ方法が指示されている場合
変形性膝関節症の痛みを改善したり予防するためには、ただ筋肉を鍛えればいいわけではありません。そのため、もし病院で医師やトレーナーに具体的なリハビリ方法を指示されているなら、その方法でやりましょう。一人ひとり異なる膝の状態に合わせた方法が考えられているはずです。指示がない人も、一度確認しておくと安心かと思います。
筋トレを続ける期間は?
変形性膝関節症の場合は筋力を維持する目的ですから、できる範囲でいいので、ずっと続けることが理想です。最低でも3ヵ月は続けるよう頑張ってみてください。筋肉の成長には、鍛える以外にも栄養や休息といった要素も関係します。そのため、筋力がアップは一朝一夕というわけにはいかないのです。
続けるためには、習慣化する必要があります。自分だけでは続けるのが難しい人は、誰かにサポートをお願いするのもひとつの手。難しい動きでも楽にできるようになりますし、一人よりはやろうという気持ちが続きやすいのではないでしょうか。
可能であればバランス良く筋肉を動かそう
今回は筋肉の中でも、筋力の維持にフォーカスしました。最初からいろいろはできないと思うので、まずはここでご紹介した筋トレをひとつでも続けることでもいいと思います。ただ、膝の痛みには他にも筋肉の柔軟性や可動域制限などが関係しており、これらにはストレッチや可動域を広げる運動が有効です。もし他の運動も興味のある方は「変形性膝関節症にはこの運動を!目的別の4トレーニングを動画解説」や「『筋肉が硬いと膝痛が起こる』を防ぐ4つの実践ストレッチ」なども併せてご覧ください。
まずはできるところから始めてみませんか?