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膝が痛い、違和感がある、曲げ伸ばしがしづらい、水がたまる……こうした症状に悩まされていませんか? それ、変形性膝関節症という膝の病気かもしれません。
えっ!?変形性膝関節症って?恐ろしい病気?と不安になった方も、あわてずこの記事をご覧ください。実はこの病気、潜在的な患者を含めると3000万人以上の日本人が患っていると言われているんです。
この変形性膝関節症とは、いったいどのような病気なのでしょうか。ここでは、症状や原因といった基本的な情報から病院での診断・手術まで、膝の専門医が分かりやすく解説します。ご紹介する症状に心当たりのある方は、これらの情報をしっかりおさえておきましょう!
変形性膝関節症の症状は?
多くの場合、変形性膝関節症の症状は膝の違和感から始まり、少しずつ進行します。もし下記のような症状に心当たりがあれば、変形性膝関節症の可能性があるため、チェックしてみましょう。
膝がこわばる
椅子から立ち上がるときや正座をするときに、膝が引っかかったり固まったりするような違和感を感じます。
歩き出しの膝の痛み
歩き出すと膝が痛みますが、多くの場合、しばらく歩いていると痛みは消失します。
階段がつらい
膝に負担のかかる階段の昇り降りがつらく感じます。
膝の曲げ伸ばしがしづらい
膝を曲げたり伸ばしたりするのがつらくなります。
膝から音が鳴る
膝を動かしたときにパキッという音がなったり、歩いているときにギシギシと音がしたりします。
膝に水がたまり、腫れる
膝関節に水がたまって、指で押すとブヨブヨします。熱を持つことも。
変形性膝関節症は、進行性の病気です
「へんけいせいしつかんせつしょう」もしくは「へんけいせいひざかんせつしょう」と読みます。膝関節は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)と、すねの脛骨(けいこつ)が連結する部分。それぞれの骨が接する部分を硝子軟骨(しょうしなんこつ)というツルツルした軟骨が覆っていて、外からの衝撃を吸収する役割や動きを滑らかにする役割を担っています。
この軟骨が何らかの原因で損傷することで膝関節内に炎症が起き、様々な症状が現れるのが変形性膝関節症です。先ほどご紹介した症状は、初期から進行期の段階。さらに進行して末期になると、痛みに加え、骨自体も損傷を受けて膝関節が変形し、歩行が困難になります。安静にしていても膝の激しい痛みが治まらず、日常生活に大きな支障が出ることに…。
どんな人がかかりやすいの?
変形性膝関節症はどの年代にも発症し得る病気ですが、50歳を超えると急激に発症率が高くなります。また、男性よりも女性に多く、60代女性の40%、70代女性では70%が変形性膝関節症を患っているとされています。
変形性膝関節症の原因は?
変形性膝関節症は、なぜ高齢者や女性に多いのでしょうか? その答えは原因にあり。この病気の原因は、一次性と二次性の、大きく2タイプに分けられます。
一次性のもの
肥満や加齢など、明確でない要因によって発症するもの。具体的な原因を見ていきましょう。
加齢
老化に伴う筋力の衰えや軟骨の弾力低下により、膝関節へかかる負担が大きくなります。また、関節内にあるヒアルロン酸も減少し、膝関節がスムーズに動かせなくなることもあります。変形性膝関節症は年齢を重ねるごとに患者数が増えるということもあって、最も一般的に認知されている原因のひとつと言えるでしょう。
筋力の低下
膝にかかる負担をカバーしているのが筋肉。年齢が若くても、運動不足などで筋力が低下すると膝へかかる負担は大きくなります。変形性膝関節症を発症する可能性があるのは、高齢者だけではないのです。
肥満
体重を支える膝関節には、立っているときに体重の2.5倍ほど、階段の昇降時には3.2倍ほどの負荷がかかっています。つまり、体重が重くなればなるほど、膝関節にかかる負担も大きくなるというわけです。でも逆に言うと、体重を減らせば膝関節への負担は減るということ。近年の研究で、体重が1キロ減ると膝関節にかかる負荷も2.2キロ減少する、というデータが明らかにされました。肥満が原因の場合は、ダイエットが変形性膝関節症の基本治療とも言えます。
【参考文献】「Effects of an intensive weight loss program on knee joint loading in obese adults with knee osteoarthritis.」Aaboe, J 他 Osteoarthritis Cartilage. 2011, Jul 19.
O脚・X脚
O脚は膝痛の大きな原因です。膝にかかる重心のバランスが崩れて負担が増えることで、膝の外側にある腓骨(ひこつ)が外側へ張り出します。このように歪んだところへ筋肉や脂肪がつくため、脛骨や腓骨が外側へ突き出して、脚が大きく変形してしまうのです。
またX脚は、膝の外側に負担がかかり硝子軟骨がすり減ってしまうことで、同様に変形性膝関節症を発症してしまうリスクがあります。日本人にはX脚が少ないため、O脚のほうがより一般的に知られています。
閉経による女性ホルモンの減少
女性ホルモンには、カルシウムの吸収を促進し骨密度を上げる作用があります。しかし閉経に伴い女性ホルモンが減少することで、骨密度が低下。脆くなった骨は壊れやすくなり、その結果、変形性膝関節症につながってしまう可能性も。
二次性のもの
スポーツなどによる外傷
靭帯損傷・半月板損傷などのけがが直接の原因となって発症するもので、スポーツなどによるけがが挙げられます。膝関節への直接的なけがに限らず、他の部位のけがをかばっているうちに膝関節へ負担が増大し、結果として変形性膝関節症を発症してしまうことがあります
関節リウマチや痛風などの疾患
女性に多い病気です。日本人は膝関節に発症しやすく、関節リウマチによって膝軟骨が損壊し、その結果として変形性膝関節症になってしまうケースがあります。
変形性膝関節症の症状に心当たりが……病院で診断してもらおう
ご紹介したような症状や原因が思い当たる場合、整形外科を受診することをおすすめします。もし本当に変形性膝関節症だった場合、放置することで進行してしまう恐れがあるためです。では、病院を受診した場合、どのようなことを行うのでしょうか。
基本的な症状の確認をする(問診)
いつ頃から、どこに、どのような症状があるのかといったことを質問されます。過去のけがや生活習慣について尋ねられることがありますが、これは原因が二次性である可能性を調べるためです。
また、変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM ;Japanese Knee Osteoarthritis Measure)という質問票を利用する病院もあります。この質問票は日本整形外科学会、日本運動器リハビリテーション学会などがまとめたもの。変形性膝関節症の方がどのような場面で症状に苦しんでいるのかを数値化し、病気の進行具合を把握することができる優れた質問票です。他にも、VASスケールやWOMACなど、様々な種類があります。
実際に患部をチェックする(視診・触診)
歩き方や膝の腫れ、可動域などを確認するのが視診です。
触診は、患部に直接触れて診断するもの。圧痛(患部を押すと感じる痛み)があるかどうか、膝に水がたまっているかどうか、といったことも触診で確認します。
骨の変形を確認する(レントゲン検査)
視診や触診を経て、レントゲン検査が行われます。X線を用いて、骨がどれほど変形しているのかを確認することができます。
変形性膝関節症の診断基準として、K-L分類(Kellgren-Lawrence)というグレード評価が用いられます。グレード1からグレード4までの4段階となっており、グレード2以上で変形性膝関節症と診断されます。また、グレード3以上(場合によってはグレード2以上)は手術療法が勧められる目安とされています。
グレード1 | 関節の隙間は保持されていますが、わずかな骨棘(こつきょく※骨がとげのように変形した状態)や軟骨下の骨硬化(骨と骨がぶつかり合い、硬くなってしまうこと)が見られる状態。変形性膝関節症の予備軍です。 | なし |
グレード2 | 関節の隙間が狭まり(25%以下の消失)、わずかな骨棘が見られるが骨の変形は確認できない状態。変形性膝関節症の初期段階です。 | ・関節鏡視下手術 |
グレード3 | 関節の隙間が50%~70%消失。骨棘、骨硬化が確認できる状態。変形性膝関節症の進行期段階です。 | ・高位脛骨骨切り術 |
グレード4 | 関節の隙間がほぼ消失(75%以上)。大きな骨棘や骨の変形が激しい状態。変形性膝関節症の末期段階です。 | ・人工関節置換術 |
靭帯や半月板を確認する(MRI検査)
診断にレントゲン検査よりも詳しい情報が必要な場合、MRI検査を行います。靭帯や半月板、軟骨などの損傷具合や、膝にたまった水まで確認することができます。
別の病気である可能性を調べる(血液・関節液検査)
症状が類似している関節リウマチや痛風などとしっかり鑑別するため、血液検査を行うことがあります。また、膝に水が溜まっている場合は関節液を採取し調べることもあります。
変形性膝関節症と診断された場合の治療法やリハビリ期間は?
変形性膝関節症と診断され治療することになった場合、どのような方法があるのでしょうか? 治療には大きく分けて保存療法と手術療法の2つがあります。「保存療法」は「手術ではない治療方法」と言い換えられ、切開などで身体を大きく傷つけずに行う治療を意味します。それでは、代表的な保存療法や手術療法を見ていきましょう。
薬物療法
保存療法として最もポピュラーなのが、薬物療法。痛みがある場合、その緩和のためNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性消炎・鎮痛剤が処方されることが多く、ロキソニンやボルタレンなどが有名です。炎症や痛みに優れた効果を発揮します。
ヒアルロン酸注射
薬物療法の代表的なものです。人間の関節の中を満たす関節液にヒアルロン酸が多く含まれることから、膝関節などの保存療法として用いられます。
変形性膝関節症では、炎症を起こした関節内でヒアルロン酸が減少し、軟骨同士がすり減ることで痛みが生じたり、動きが制限されたりします。これを緩和するために、ヒアルロン酸を関節内へ直接注射するのがこの治療法。頻度としては、週1回の治療を3〜5週間続けます。その後は効果に応じて2〜4週間に1回のペースで行われることが多いですが、痛みが生じた際にはその都度、治療を受けることも可能です。
ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症の痛みを始めとする諸症状を緩和する効果が実証されています。保存療法の中では最も一般的で、安心できる方法と言えるでしょう。
ステロイド注射
膝関節が炎症を起こし強い痛みがある場合や水が溜まってしまった場合、ヒアルロン酸注射では効果がないケースがあります。こうした場合に有効なのがステロイド注射。非常に高い鎮痛効果を持ちます。しかし、副作用の恐れが低いヒアルロン酸注射と異な
り、頻回な利用は副作用を引き起こすリスクを伴います。そのため、治療頻度については医師の正しい判断が欠かせません。
ステロイドは本来、体内で生成される副腎皮質ホルモンのひとつ。これと似た成分・作用になるよう人工的に合成した薬剤が、ステロイド注射に使用されます。
装具療法
膝関節を安定させるサポーターを使ったり、足にかかる体重を分散させるための杖や足底板(くつの中敷き)を使ったりすることで、膝関節への負担を軽減させるものです。病院で直接受け取るケースと、処方せんにより個別で作成してもらうケースがあります。
物理療法
湿布を用いた治療や、患部に電気を流す電気治療で痛みの緩和を図ります。初期の段階で使われますが、進行してくると効果は薄くなってしまいます。
運動療法
膝に過度な負担がかからない程度であれば、筋トレやストレッチといった運動療法が効果的な場合も。筋トレをして筋力をつければ、膝にかかる負担をカバーすることができるからです。代表的なのが大腿四頭筋(だいたいしとうきん)という、太もものトレーニング。ただし、変形性膝関節症の進行具合によっては運動が適さないこともあるため、自己判断は禁物。医師の助言のもとで行うのが理想です。まずは病院で診断を受けましょう。
手術療法
残念ながら、保存療法では変形性膝関節症を根本的に解決することはできません。歩行障害が現れるなど症状が悪化してしまった方や、上記のような保存療法を6ヶ月ほど継続しても痛みが改善されない方、先に触れたK-L分類で変形性膝関節症のグレード3以上と認められる方に対しては、医師から手術療法が勧められることがあります。
患者の訴えや状態を考慮し、手術の手法や時期を決定します。現在主流となっている手術には関節鏡視下手術、高位脛骨(けいこつ)骨切り術、 人工膝関節置換術といったものがあります。それぞれ、術後に必要なリハビリ期間や費用と併せて見てみましょう。
関節鏡視下手術
主に変形性膝関節症の初期段階で施される手術です。関節内で剥がれてしまった軟骨や半月板、炎症を起こしている滑膜を取り除く手術です。関節の周囲より内視鏡を用いて手術を行います。術後の入院期間は2〜10日間程度。1割〜3割負担の保険を適用すれば、約1万8000円〜約5万3000円ほどで手術を受けることができます。
応急処置的な手術として広く浸透していますが、完治させるための手術ではありません。初期に行うことで痛みを和らげるなどの効果は得られますが、重度の場合には全く効果がないというケースもあり、さらに高度な手術が必要となることもあります。
高位脛骨(けいこつ)骨切り術
変形性膝関節症によってO脚やX脚が進行してしまった方に施される手術で、O脚であれば膝関節の外側、X脚であれば膝関節の内側に損傷がないと認められることが条件。自身の膝関節を温存できるため、アクティブでいたい(スポーツなどの継続を望む)方で、かつ年齢が比較的若い方に向いている手法です。
高位脛骨骨切り術のメリットは、その持続効果。十年以上も効果があると言われています。自分の関節を残すことができるため、スポーツや重労働を継続できるのも利点。ただし、骨をプレートで固定するという手法の性質上、骨粗鬆症など、骨がもろくなるような疾患を持つ方には適用できません。
手術費用としては、1〜3割負担の保険適用で3〜12万円ほど。リハビリなどのため3週間は入院が必要ですが、術後1〜2週間ほどで杖をついての歩行が可能になります。
高位脛骨骨切り術は、脛骨を切って膝関節にかかる負担のバランスを調整するのが目的です。オープン・ウェッジ法とクローズド・ウェッジ法の二つが存在します。それぞれご紹介します。
- オープン・ウェッジ法
オープン・ウェッジ法は、脛骨の内側に切り込みを入れて広げ、そこへ人工骨を入れてプレートで固定するという手法です。手術にかかる時間は1時間半程度。
この手法、以前は入院期間やリバビリ期間の長さなどからあまり多くは採用されませんでした。しかし、骨を固定する強力なプレートが開発されたり、人工骨の改良が進んだりしたことから脚光を浴びるようになっています。βTCP(β-リン酸三カルシウム)という人工骨には、2〜3年ほどで自分の骨に吸収されるという特長があります。この人工骨を固定するために使用したプレートとボルトは術後1年〜1年半ほどで取り出されるため、将来的に人工物が体内に残る心配がなく安心です。
- クローズド・ウェッジ法
矯正する角度が大きい場合、オープン・ウェッジ法は適用できません。この場合、クローズド・ウェッジ法が考えられます。これは、脛骨の外側をくさび形に切り取り、その断面を合わせてプレートで固定する方法です。脛骨の外側にある腓骨(ひこつ)の切断も必要になるため、身体への負担が大きくなります。やや難しい手法です。
人工膝関節置換術
変形性膝関節症の末期で、膝関節が重度に変形してしまっている方、強い痛みに悩まされている方に向いています。 この手法は人工膝単顆置換術と人工膝関節全置換術に分けられ、すり減ってしまった膝関節の範囲に応じて決定されます。
人工膝関節置換術には痛みの大幅な緩和が期待できるほか、O脚も改善されまっすぐの歩行が可能となります。人工の器具も性能がよいものが開発され、20年ほどの耐久性を持つようになりました。 しかし、仮にこの期間を待たず劣化してしまった場合、人工関節を取り外して再度新しいものを装着する必要があります。その場合の手術は一回目よりも複雑となるうえ、感染症などのリスクも伴います。
単顆置換術、全置換術ともに同じ値段。保険が適用されるため、1〜3割の負担で8万円〜24万円ほどです。それぞれの特徴を見ていきましょう。
- 人工膝関節単顆置換術
片側の膝関節のみ損傷が激しい場合に施される手術で、片側のみを人工の関節に置き換えるというものです。自身の骨・関節を温存できるため、比較的違和感が少なく済むようですが、自身の骨と人工の骨のバランスを取ることが難しく、手術は複雑なものになります。1時間半程度の手術で、術後3日ほどでリハビリが開始できます。入院期間はおよそ2週間ほどです。
- 人工膝関節全置換術
関節全体を人工のものに置き換えるという手法です。2時間ほどの手術ですが、単顆置換のように自身の骨と人工の骨とのバランスを考える必要がありません。しかし自身の骨や関節を温存できないため違和感が生じやすく、身体への負担も大きくなってしまいます。術後、歩けるようになるためのリハビリに時間を要することがあり、入院期間も1〜2ヶ月と長めです。
放置はNG!症状に心当たりのある方は、早めの受診・治療を
変形性膝関節症は、それぞれの病気の進行具合・症状に合わせて適切な処置を施すことで治療できる病気です。ただ、症状が末期まで進行し膝が完全に変形してしまった場合、残された手段は人工関節置換術のみ。そうして手術をすることになれば、入院・リハビリ・費用と長期的な負担が大きくなります。ここでご紹介した症状に心当たりのある方は、早めの受診をおすすめします!