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膝痛を伴う疾患の中でもっとも発症頻度が高いと言われる病気、変形性膝関節症。特に50歳以降に発症率がぐんと伸びるのが特徴です。つまり、予防するなら40代がターニングポイント! そのためには、まずどんなことがきっかけで変形性膝関節症のリスクが高まるのか、原因を知らなければなりません。
日常の動作や性別、体重、スポーツ歴など、今回取り上げる7つの要素にひとつでも心当たりがある人は、すでに変形性膝関節症の予備軍かも!? 膝の痛みに老後を塗りつぶされたくなかったら、今すぐチェックして予防しましょう。
変形性膝関節症の原因は2タイプ
変形性膝関節症とは「変形性膝関節症かも?と思ったら読んでほしいコラム【原因と改善法】」でも解説しているように、軟骨がすり減ることで膝関節に炎症や痛みが生じる病気です。進行すると骨自体が削れて変形してしまい、歩けなくなることも……。
そんな変形性膝関節症、原因は大きく2つのタイプに分けられます。なぜ軟骨がすり減ってしまったのか、明確なケースとそうでないケースです。
不明確な原因:様々な危険因子
変形性膝関節症のほとんどは、軟骨のすり減り原因を限定することが困難です。考えられる危険因子としては、加齢や肥満、筋力、O脚(X脚)、性別などがありますが、どれが影響しているかは推測になります。またいくつかの因子が複合で関係している可能性も。
こういった、原因としてはっきりと断定できないものの影響と考えられるケースを、一次性変形性膝関節症と言います。
明確な原因:ケガの影響
スポーツや事故などで膝周辺に外傷(ケガ)を負った場合、そこから変形性膝関節症を発症することがあります。例えば、膝関節内にある半月板を損傷すると、炎症が起きて軟骨が破壊され、変形性膝関節症に。靭帯や筋肉のケガなどでも、膝関節への負担が急に大きくなるため、変形性膝関節症の引き金となります。
このように原因が明確なケースは、二次性変形性膝関節症と言います。
変形性膝関節症の予備軍を調べる7項目
ケガは突発的に起こるものなので、いわば例外(ストレッチなどケガを予防する工夫はありますが)。先に触れたように、危険因子によって変形性膝関節症を引き起こすケースがほとんどです。特に次の7つは要チェックのポイント。それでは早速、チェックしていきましょう!
チェック1:日常の動作(ADL)
日常生活の中には、変形性膝関節症の発症リスクを高める動作が盛りだくさん。特にこんな動作をしている人は、変形性膝関節症の予備軍と言えます。
- しゃがんだり立ったりすることが多い……大工、内装業、保育士など
- 重いものを持ったり階段の昇り降りが多い……運送業、引っ越し屋など
- 膝を使う和式スタイルで生活している……ちゃぶ台、和式トイレ、敷き布団での寝起き
しゃがんで立つ動作は、膝を頻繁に曲げ伸ばすため膝を酷使します。また、重いものを持つのもそれだけ膝への加重も増えますし、さらに階段の上りでは加重の3.2倍、下りでは3.5倍の負荷が膝に加わります。その蓄積が他の人より大きくなる動作をたくさんしているため、軟骨がすり減りやすく、変形性膝関節症のリスクも高まると考えられるのです。
ADLに関する変形性膝関節症の予防法
予防法はシンプルで、危険因子な行動を控えることです。ただ、職業上なかなか動作を変えられないという人もいるでしょう。そういった人は、せめてオフタイムで改善してみてはいかがでしょう。
例えば、正座をしないよう意識する、階段では手すりを使う(駆け上ったり駆け下りたりは論外!)など。体重の増加は倍増して膝の負荷となるため、肥満に注意することも大切です。
また、靴にこだわりを持ってみることはオンタイムでもできそですね。シューフィッターや理学療法士など、専門家に相談して靴を選ぶことをおすすめします。
膝痛と関連の深い行動と予防法は「膝痛の原因はアレ!? 膝寿命を縮める15のNG行動【男性編】」でもまとめているので、併せてご覧ください。
チェック2:遺伝子
変形性膝関節症が遺伝というのは以外かもしれませんが、実際に原因となる遺伝子が世界でいくつか見つかっています。そして疫学調査から、遺伝的因子と環境因子(ADLのようなもの)の相互作用によって発症するというのは、理化学研究所も発表している事実です。
世界で初めて発見された変形性膝関節症の原因となる遺伝子が、アスポリン遺伝子です。軟骨細胞の働きを抑制してしあう作用があります。なかでも、D14多型という配列形態を持つ人だと、リスクは2倍と言われています。
また、成長因子 GDF5 遺伝子内の多型も、影響していると言われています。こちらは、変形性膝関節症患者の80%が持っている遺伝子。GDF5は関節の形成や軟骨細胞の分化に関わっているのですが、この遺伝子を持っているとその活性が低下するため、発症しやすくなると考えられています。
そして、 DVWA 遺伝子内のSNP。日本人では変形性膝関節症のリスクが1.6倍増加するとされる遺伝子です。軟骨細胞の骨格を形成するタンパク質との結合が低下することがリスクにつながると考えられています。
遺伝子に関する変形性膝関節症の予防法
遺伝子を変えることは不可能。ただ先に言ったように、変形性膝関節症は遺伝的因子と環境因子の相互作用で発症します。つまり、環境因子の面から予防することができるのです。
具体的には、日常生活での行動がほとんど。食生活をしっかり管理して、体重増に気をつけます。食事面なら「変形性膝関節症を予防する食事〜5つのOKと3つのNGとは?〜」で詳しくとりあげたように、膝に良い食事を意識することもひとつでしょう。
また、水泳(もしくは水中ウォーキング)といった膝に負担のかからない運動も有効です。
チェック3:スポーツ歴
膝はすべてのスポーツに深く関係する部位。そのため、どんなスポーツをしてきたかで、変形性膝関節症のリスク度が違ってきます。適度な運動なら問題ありませんが、下記のような膝を酷使するほどのスポーツを長年続けている人は、変形性膝関節症の予備軍とも考えられるのです。
- サッカー
- テニス
- ラグビー
- バスケットボール
その理由には、膝関節のつくりが関係。膝関節は構造上、横の動きに弱くできています。つまり、膝をひねる動作の多いスポーツは負担がかかりやすいのです。加えて、これらのスポーツをしていると、膝のある一定部分にだけ負担がかかることも。これが軟骨のすり減る原因となり、変形性膝関節症を引き起こします。
また、上記のスポーツだけに限りませんが半月板損傷や前十字靭帯断裂など、過去にスポーツ外傷の経験がある人はさらに要注意。ケガが治っても、そのケガですり減った軟骨の修復は不十分。本来の機能まで回復しない場合もあり、最初にお話した二次性変形性膝関節症のリスクが、格段に高まります。
スポーツに関する変形性膝関節症の予防法
予防法と言っても、好きでやっているスポーツなので余程のことがない限り、やめることも難しいですよね。そんな人は準備運動やケガ予防のためのテーピング、クールダウンなど、基本をしっかりおさえましょう。これから運動を始めたいと思っている方には、膝への負担が軽いスポーツをおすすめ。例えば、水泳やサイクリング、ウォーキング、トレッキング(高低差の少ない山)などがあげられます。
余談になりますが、昭和のスポ根マンガでは鉄板だったうさぎ飛び。昔はプロ野球のキャンプ風景でも見かけましたよね。でも今ではほとんど行われなくなっています。というのも、実は半月板にかかる負荷がとても大きいのです。確かに、平成のスポーツマンガでは見かけませんよね、うさぎ飛び。
チェック4:既往歴(病気の経歴)
過去にかかった病気もスポーツのケガ同様、変形性膝関節症を引き起こす引き金となります。変形性膝関節症の診断時に原因としてはっきり紐づけられることが多く、次にあげる既往歴のある人は今すぐ予防するためのアクションが必要です。
関節リウマチ:禁煙とよく笑うことを意識
関節が炎症して、軟骨や骨が破壊されてしまう病気です。今でもなく、軟骨や骨の破壊は変形性膝関節症の直接的な原因になります。この関係性は、『日本内科学会雑誌』の第99号でも示されています。
関節リウマチの予防法としては、まずは禁煙が有効です。関節リウマチは喫煙者の発症率が高いのですが、病気の進行も進みやすく薬が効きにくいことが分かっています。また、ストレスや働き過ぎが発症、悪化させると言われています。溜め込まずにこまめに解消が鉄則。おいしいものを食べたり、よく笑うことなどを心がけましょう。
半月板損傷:膝への負担軽減や冷え予防を意識
半月板とは、膝関節の間にある軟骨の板のこと。関節にかかる衝撃を吸収して和らげる役割を果たしているため、半月板が損傷してしまうと特に変形性膝関節症になりやすいと言えるのです。実際、治療において半月板損傷を切っている人の方が変形性膝関節症になりやすいことが、埼玉医科大学の立花氏の研究論文「変形性膝関節症の診断と治療」でも示されています。
そのリスクをなるべく減らすためには、半月板損傷による膝関節への負担をこれ以上大きくしないことが大前提です。膝に無理な力がかからないよう筋トレをするなど、身体づくりが予防のカギとなります。加えて、身体を冷やさないようにすることも有効。身体が冷えると自律神経に作用して、筋肉が緊張します。これでは膝への負担も増えてしまいます。流行りのシルクを使った”冷えとり”なんかもいいかもしれませんね。あとは、定期的な投与が必要ですが、ヒアルロン酸注射で物理的に膝関節の潤滑油を補充して負担減を図るのもひとつです。
前十字靭帯損傷:正しいスクワットと膝への負担軽減を意識
骨と骨を離れないように結んでいるのが靭帯。特に前十字靭帯は膝を安定させる働きがあります。その靭帯が損傷してしまうと、関節が不安定に……。結果、半月板や軟骨が摩耗し、変形性膝関節症の原因となるのです。
前十字靭帯を損傷しているため、ここに負担をかけないことが大切です。具体的には、膝が内側、足先が外側を向く、”ニーイントゥアウト”という姿勢。こうなる要因として、太ももの内側の筋力低下が考えられるので、背筋を伸ばしたまま腰をゆっくりとさげていく正しいスクワットが有効です。その他にも半月板損傷と同様、冷え対策やヒアルロン酸注射で膝への負担を軽減することも、予防法としてあげられます。
チェック5:性別
変形性膝関節症は性別によってもリスクの度合いが違います。日本整形外科学会によれば、女性の変形性膝関節症の発症率は男性のなんと4倍。米国・アイオワ大学の研究でも、この性差があることを『Osteoarthritis and Cartilage誌』2014年8月号で発表しています。その理由のひとつには、筋肉量が少なく膝を補助する力が弱いことが言えるでしょう。また、ホルモンバランスの関係から自律神経が乱れがちなこと、冷え性による血行不良で筋肉が硬くなりやすいことなども関係していると考えられています。
女性が行うべき予防法
性別も遺伝子同様、いまさら変更することはできません。そのため、女性が発症しやすい理由を改善する他ないのです。
まずは太ももの筋トレで筋力アップを図ること。ホルモンバランスの乱れに心当たりのある方は、ホルモン補充療法を専門家に相談してみるのもひとつです。自律神経を整えるには、漢方もいいでしょう。冷え対策としては、先に出た冷えとりや、筋トレでも改善が期待できます。足を肩幅に開いて息を吐きながらかかとをあげ、吸いながら下ろす”カーフレイズ”や、前出のスクワット、足を伸ばして座った状態のまま、骨盤を前後させて進む”骨盤歩き”などが有効です。
女性におすすめの変形性膝関節症の予防方法については「【医師が解説】変形性膝関節症の女性のための具体的な予防方法とは?」でも詳しくご紹介しているので、併せてご覧ください。
チェック6:体重
身体の重さは直接的に膝への負担増となります。つまり、軟骨の損傷を早めることに。体重の増加は、一次的変形性膝関節症の大きな危険因子とされています。そのため、肥満指数を示すBMI値を意識してみてください。体重kg×(身長m×身長m)で算出される数値で、25以上が肥満に分類されます。そんな人は要注意と言えるのです。
ではなぜ、肥満だと要注意なのでしょう。その理由は膝関節への負荷。日常の行動(ADL)の項目でも触れたように、膝には立っているだけでも体重の2.5倍の負荷がかかっています。60kgの人の場合、なんと150kg。さらに、階段の上りでは3.2倍、下りでは3.5倍に負荷が増すことがドイツの人工関節治験の論文で発表されているのです。
肥満に関する予防法
体重を落とすことがまずあげられますが、注意点があります。それは、行き過ぎた運動や食事制限。極端にやりすぎると、他の病気のリスクが高まり、結局は変形性膝関節症の要因を増やすことになってしまいます。食べないというよりも、食べるものを変えるんです。肉よりも魚、魚よりも野菜を多く摂取。甘いものやお酒も控えたいですが、やり過ぎてもストレスからどか食いしかねないので、量を決めて守るようにしましょう。
チェック7:筋肉量
性別の項目でも触れたように、筋肉が衰えると膝への負担が増えるため、変形性膝関節症のリスクは高まります。つまり、筋肉量が低い人は、変形性膝関節症の予備軍と言えるのです。先にあげた女性もそうですし、加齢によっても筋肉は減少。もちろん個人差はありますが、40歳前後から年に約0.5%ずつ減少し、60歳を過ぎると年間5%以上の筋肉量が減少する人もいます。
筋肉が減少すると日常の動作がつらくなり、動かない→さらに筋肉量は減少と、負のスパイラルを招くのです。
関係する筋肉1:大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
膝関節に関係する筋肉として代表的な、太もも前面の筋肉です。膝にかかる衝撃を、大腿四頭筋の筋力で軽減しているため、この筋肉量の低下は変形性膝関節症のリスクの高まりに直結します。
この筋肉を鍛える方法のひとつとして、次のような運動があります。
- 片方の膝は立てて、仰向けに横になります。
- 伸ばした方の足を10〜20cmほどあげ、3秒キープしてから下ろす。
- これを5〜8回繰り返します。
これは膝関節に負担がかからないようにできる大腿四頭筋のトレーニングで、ロコモ体操のひとつとしても広まっています。
関係する筋肉2:中殿筋(ちゅうでんんきん)
お尻の横側の筋肉が中殿筋。この筋肉量が減少して筋力が低下すると、膝に横ぶれが生じてしまいます。そう、膝に良くない横の動きが増えるのです。この蓄積から、変形性膝関節症につながる可能性が考えられるのです。
中殿筋のトレーニング法はこちら。
- 足を伸ばした状態で、横向きに寝そべります。
- 上にある足を曲がらないように意識しながら高く上げ下げします。
そう、エアロビクスと聞いてイメージする人も多い、あの動きです。腕を枕にしたり、下側の足を曲げたりすると身体が安定してやりやすいかと思います。
関係する筋肉3:前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
文字通りは脛(すね)に存在する筋肉で、つま先を持ち上げるなど歩く動作に欠かせません。この筋肉が硬くなったり衰えると、膝関節が屈曲位(曲がった状態)に。そこに体重が乗ると膝への負担が増してしまうため、変形性膝関節症のリスクが高まる可能性があります。
前脛骨筋のトレーニング法は、大腿四頭筋同様、膝に負担のかからない筋トレ法がおすすめです。
- 背筋を正して、椅子に浅く腰をかけます。
- 片足を伸ばし、つま先を脛の方に反らせます。
- 2〜3秒キープした後に力を緩めるというのを30回くらい。
変形性膝関節症は早めの予防がカギ!
発症してからだと完治が難しいのが変形性膝関節症。そのため、原因を知って、早めに予防するのが得策です。日本人は平均寿命が長い分、健康寿命を伸ばさないと寝たきり期間が長くなってしまいます。現在の統計にのっとると、寝たきりで10年も余生を過ごすことに! そういった意味でも、ご紹介したような予防法を試すことがおすすめです。変形性膝関節症の予備軍率の高い40代に足を踏み入れたなら、初めてみませんか?