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出産後しばらくしてから膝が痛み始めて困っている。この膝の痛み、いつまで続くんだろう……。そんな方はいませんか? 日々の子育てで身体を使うのに、膝が痛み始めたら気になって仕方がないですよね。でもご安心ください。同じく産後の膝痛を経験した当院スタッフが、具体的なアドバイスを送ります。
この記事では、まず産後に膝が痛くなる5つの原因をピックアップ。そんな原因に対し、当院スタッフが実体験を分析しながら行った改善法をご紹介します。さらに、メディカルトレーナーから、子育て中でも気軽にできる対処法のご提案も。「膝痛に負けず、子育てを頑張りたい!」というあなたに、役立つアドバイスをお送りします。
産後に膝の痛みが生じる5つの原因
36歳で第1子を出産後、約3か月でギシギシとした感覚を伴う膝の痛みが出現した、という経験を持つ当院のスタッフ。そのスタッフの知人は30歳で第1子を出産し、6か月で膝痛が出現したそう。時期は様々ですが、こういった産後の膝の痛みには、どんな原因がかくれているのか。考えられる事象と、なぜそれで膝痛が起こるのかをまずは把握しておきましょう。
産後に膝が痛くなる原因① 体重の増加
妊婦の体重は、胎児の成長に伴って増加。人によっても異なりますが、妊娠前と比べると10キロ近くも増えるとされます。これによって膝関節への負担が増加することで、産後の膝痛が誘発されている可能性が考えられます。というのも、膝関節への負担は体重とイコールではないため。体重が1キロ増えると、膝関節への負担は2キロ〜3キロほど増加することが分かっています。
【出典】Messier SP, 2005 Jul;52(7):2026-32. 「Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis.」
産後に膝が痛くなる原因② 骨盤の歪み
妊娠から出産にかけては、筋力バランスが崩れやすくなります。筋力バランスの崩れが骨盤周りに起こると、骨盤が歪んでしまうことも。これは骨盤痛や腰痛をもたらす原因となります。
膝痛とは関係ないのでは? と思われるかもしれませんが、骨盤と膝は密接に関係。骨盤が歪むと、骨の角度や股関節・膝・足首の関節の配列(アライメント)が崩れることも。すると運動連鎖から膝への負担が大きくなり、痛みが生じることがあるのです。
骨盤の歪みは筋力バランスが崩れる他、次にご紹介する産後のホルモン変化も関係しています。
産後に膝が痛くなる原因③ ホルモンの影響
妊婦の体内では、胎児の通り道である産道を確保するための準備が行われています。そのために分泌されるのが、リラキシンというホルモン。関節や靭帯を弛める働きのあるリラキシンは、股関節や仙腸靭帯といった周辺の靭帯を弛めて骨盤を開きやすくすることで、スムーズな分娩を助けています。
ただ、リラキシンが作用するのは骨盤周りだけではありません。膝関節や靭帯もその影響を受けて不安定な状態になりやすいのです。出産後はオキシトシンというホルモンの作用で、徐々に元通りになっていくと言われていますが、歪みが大きい場合などは長期にわたって影響が続く場合も。ホルモンバランスが整うのは産後数ヶ月〜半年と、人によってばらつきがあります。
産後に膝が痛くなる原因④ 子育てによる膝への負担
産後、息つく暇もなく始まる子育て。膝をついたり、子どもを抱きかかえて立ち上がったりしゃがんだりといった、これまであまりなかった動きをするようになるでしょう。身体の状態が出産から回復しきっていない状態で膝に大きな負担がかかり、痛みが生じている可能性が考えられます。
産後に膝が痛くなる原因⑤ 膠原病
非常にまれなことですが、膠原病(こうげんびょう)が原因となって、産後に膝の痛みが生じている場合があります。膠原病とは、免疫機能の異常による病気の総称です。
身体を守るためにウイルスなどの異物を攻撃するのが、本来の免疫機能。しかし膠原病になると、その免疫が異常をきたし、健康な身体の組織まで攻撃してしまうようになるのです。代表的な膠原病には関節リウマチ、全身性エリテマトーデスがあります。
関節リウマチ
関節リウマチは、指、肩、膝、足といった全身の関節に炎症が起きる進行性の病気です。進行して関節の炎症が続くと、次第に関節内の軟骨は破壊され、末期には骨にもダメージが及びます。関節は完全に変形し、最悪の場合には寝たきりになってしまうことも。関節の炎症や身体障害は、発症後の2年間で急速に進行すると言われています。
関節リウマチは女性に多く、発症率は男性の3倍以上。40〜50代での発症が半数を占めますが、20〜30代での発症も全体の3割ほどと、少なくはありません。
全身性エリテマトーデス(SLE)
関節リウマチと発症メカニズムは同じですが、異なるのは、身体中のあちこちに痛みが移動すること。膝関節や股関節などに、痛みや腫れが生じます。加えて、発熱や身体のだるさ、皮膚の発疹、痙攣、血尿や腎障害によるむくみ、息切れや貧血など、あらゆる症状が全身に現れるのも特徴です。
産後の膝痛改善には小さなことからアプローチ
産後の膝の痛みで考えられる原因は大きく5つ。ただ、その中から「あなたの膝の痛みはこれ!」と一つに絞るのは難しいかもしれません。
この表はあくまで目安ですが、ご紹介した5つの原因別に膝の痛みが現れる時期を表したイメージです。膝痛を引き起こす原因ができやすい時期はありますが、いずれも産前・産後をまたいでほぼ同時に発生しています。そのように考えると、原因を一つと特定するのは困難と言えるでしょう。
では、産後の膝の痛みはどのように対処すればいいのでしょうか。ダイエット、骨盤を正常に戻す体操など、いくつか考えられる方法はあります。ただ、子育てが始まったばかりで落ち着かない日々を過ごしている人も多いと思います。そんな中、全ての原因を考えてアプローチするなんて無理! と思われるかもしれませんね。でももっと日常の中で、小さなことから膝の痛みを改善していくことは可能なのです。
ここからは、当院のスタッフとその知人の実体験をもとに、産後の膝の痛みを改善する方法をご紹介していきます。
産後の膝の痛みを改善する方法① 日常動作を見直す
子育てにも影響が出るし、ひとたび気になり始めると止まらない産後の膝の痛み。一つ目の改善方法はズバリ、自分の日常動作を見直してみること。まずご紹介するのは、冒頭でご紹介した当院スタッフの体験談です。
当院スタッフの産後の膝痛体験談
36歳で第1子を出産後、約3か月で膝痛が出現しました。子どもが7~8kgのときだったと思います。しゃがんだ状態から立ち上がるとき、膝がギシギシする感覚とともに痛みを感じたのです。
考えられる膝痛の原因
子育て中の自分の動きを見直してみると、子どもを両手で抱っこしたまま立ち上がるという動作が、膝への負担に繋がっているのではないかと考えました。子どもをベッドではなく床(布団など)に寝かせている場合、そこから抱っこして立ち上がることで、膝への負担はより増加します。膝へかかる負担が平常を大きく超えたためではないかと思います。
膝痛を改善するために行った行動
まず、何か支えになるものにつかまって立ち上がることを意識しました。さらに、子どもを抱っこした状態から立ち上がるのではなく、いったん子どもを置いてから立ち上がり、抱っこするように心がけました。その後、ちょうど仕事復帰の時期も重なって子どもを預けることになり、日中にかかる膝への負担が減ったためか、数か月で完全に症状はなくなりました。
第2子の出産後にも同様のことに気をつけると、膝痛は全く現れませんでした。
30歳女性の産後の膝痛体験談
当院スタッフの知人のお話です。第1子を出産し6か月が経過した頃、以前から行っていたマラソンへの復帰を決めたそう。しかし、ランニングを始めたところ膝痛が出現。膝の痛みを感じたのは初めてで、膝には腫れも熱感もありませんでした。ただ5キロ走るのが限界で、ギシギシと痛むようになってしまったといいます。
考えられる膝痛の原因
マラソンも膝への負担はかかりますが、産後ということで、当院スタッフ同様に子どもを抱っこしたまま床から立ち上がるという行為が負担となっている可能性が考えられたと言います。
膝痛を改善するために行った行動
まず、子どもを抱っこしたまま床から立ち上がることを避けるよう指示したそうです。マラソンは本人のストレス解消にもなるため、痛みのない範囲で練習するようにと伝え、継続。その結果、痛みは消失し、産後8か月程度でハーフマラソンを完走したそう。ヒアルロン酸注射という選択肢もあると伝えましたが、結局行わなかったとのことです。
産後の膝の痛みを改善する方法② 骨盤の状態を整える
子育てなどの日常動作を見直し、気をつけることを洗い出すのも大切ですが、やはり骨盤ケアも必要です。というのも、出産に際して骨盤は大きく開いた状態になるため。そのままにしておくと内臓の位置が下がってしまったり、太りやすくなったりするのです。膝痛の有無に関わらず、産後は6か月以内に骨盤の状態を整えるべきとされています。
整骨院などで骨盤矯正の施術を受けるのがベストですが、なかなか時間もなくて難しいという人もいるでしょう。そんな人は、子育てや家事の最中でもできる次のようなケア方法を試してみてください。
メディカルトレーナーが教えるセルフ骨盤ケア方法
立ったままでお尻を締める運動がおすすめです。道具は必要ないため、子育てや家事の合間にも気軽に行うことができる骨盤ケア方法です。
①両足をくっつけた状態で立ちます。
②かかとをつけたまま、爪先を45度に開きましょう。
③かかとをつけた状態を維持したまま、爪先を使って身体を上げ下げし、お尻を締めます。
④これを15回、3セット行いましょう。
育児をしながら骨盤ケアできる商品も
装着するだけで骨盤をケアできる商品も販売されています。就寝時や家事の最中にもつけたままでよい商品もあるため、生活様式に合わせて選んでみてください。装着時のポイントとしては次の通りです。
・ギュッとしめるのではなく、軽く抑える程度がポイント。
・着ける場所は恥骨の下あたりがおすすめです。
・上につけすぎると下が開いてしまい逆効果となるので注意しましょう。
産後の膝の痛みは放置しないで!
産後の膝の痛みは、原因を一つに絞るのが難しいかもしれません。しかし、日常生活でできることから膝の痛みにアプローチしてみることで、症状の改善は期待できます。一番やってはいけないのは、無理をすること。痛みをかばい続けると、他の部位への負担が集中することになります。結果として、女性が罹りやすい変形性膝関節症という疾患に繋がってしまう可能性も否定はできません。早めに適切な対処を施すことで、将来的な膝の健康も保つことができるのです。
また、膝の痛みに全身の関節炎や発赤、体調不良を伴う場合は、専門的な治療を必要とする膠原病を発症している可能性も考えられます。可能性としては高くありませんが、出産前後は身体の状態が急激に変化しやすいため、注意しておいて損はありません。膝以外にも腱鞘炎や上腕骨外上顆炎、恥骨部痛など、様々な症状の起きやすいのが産後です。なにかおかしいと感じたら、早めに病院を受診するようにしてくださいね。出産前後であれば、整形外科よりも通院中の産婦人科の助産師さんに相談してみるのが良いかもしれません。