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膝関節の病気としてもっとも知られていると言える変形性膝関節症。整形外科界では国民病とも言えるほど患者数が多く、レントゲンで診断されているだけでも2400万人(50歳以上)という調査結果が発表されています。実は、変形性膝関節症は診断されていない隠れ患者も多いのが特徴。膝がなんとなく重い、だるいと感じたら、変形性膝関節症かもしれません。
そんな症状が出たとき慌てないためには、症状によって膝がどのような状態なのか、原因は何が考えられるのか、どう対処すべきか、しっかり整理しておくことが有効です。
変形性膝関節症とは?
まずは変形性膝関節症の症状と、その症状が出たときに膝関節がどんな状態か知っておきましょう。
正常な膝関節
膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の連結部分。2つの骨が接する部分は硝子軟骨というツルツルした軟骨で覆われていて、衝撃を吸収したり動きを滑らかにしたりする役割を担っています。さらに半月板や、滑膜から分泌された関節液なども、クッションや潤滑油のような働きをしています。
この正常な膝関節の状態が崩れ、様々な症状が生じる膝関節の異常事態が、変形性膝関節症です。
初期の変形性膝関節症
関節液の弾力性が低下することで、衝撃の加わる部分の軟骨が徐々にすり減ってきます。この段階で激しい痛みはありませんが、以下のような違和感を感じる人が多いようです。
初期の症状1:膝がこわばる
椅子などから立ち上がる度に膝が固まったような違和感があったり、立ち上がりにくさを感じることがあります。
初期の症状2:正座しづらい
長時間の正座やあぐらの後に立ち上がると痛みを感じたり、すぐには膝が伸びきらなかったりします。
初期の症状3:階段で膝がつらい
階段の上り下りにつらさを感じます。特に階段を下りるときに、膝への負担や痛みを感じることが多いようです。
初期の症状4:歩き始めに膝が痛い
歩き出したときは痛みを感じるけれど、歩いているうちに痛くなくなってくることがよくあります。
初期の症状5:音が鳴る
膝を動かしたときに音がするのは、変形性膝関節症の予備軍と言える症状。ポキッとかパキッという音は、まだそれほど心配する必要はありませんが、ギシギシやコキコキなどの音は要注意です。
進行期の変形性膝関節症
変形性膝関節症では、初期の状態が続くことで膝への負担が増加し、さらに軟骨がすり減ったり半月板が変形したりします。この刺激によって関節を包んでいる滑膜が炎症。それを抑えるために関節液が大量に分泌され、ひざに水がたまる関節水腫を起こします。
進行期の症状1:膝が曲げ伸ばしにくい
通常の生活での膝の曲げ伸ばしや正座が苦痛になり、完全に曲がりきらないし伸びきらない状態になります。
進行期の症状2:膝に水がたまる
炎症による痛みや熱を帯びた状態に加え、水がたまることで腫れてしまい膝が動かしにくくなってしまいます。
末期の変形性膝関節症
さらに進行すると、負担が集中してすり減っていた部分の軟骨が完全になくなります。こうなると大腿骨や脛骨が直接ぶつかり、骨自体も削れて損傷することに。関節が不安定な状態になるため、見た目にも分かるほど膝関節が大きく変形してしまいます。
末期の症状1:膝が痛くて歩けない
膝の痛みはもちろんですが、膝関節の変形でまっすぐ伸ばしきれない状態になり、歩行が困難になります。
末期の症状2:寝ていても膝が痛む
変形性膝関節症の進行期までは何かすると痛むレベルですが、末期になると激しい痛みで眠れないこともあります。
変形性膝関節症の治療は原因追及が大切
このように放置すると確実に進行してしまうのが変形性膝関節症の恐ろしいところ。末期まで進行して膝関節が大きく変形してしまっては、治療法はもう人工関節置換術しかありません。
そうならないよう初期の時点で対策するためには、まず変形性膝関節症の原因を知る必要があります。なぜなら、原因となる危険因子は下記のように様々考えられ、それによって治療方法も変わってくるからです。
加齢
老化の影響は確実に膝関節にも現れます。具体的な要因は、老化に伴う筋肉の衰え、骨の質の低下など。筋肉が衰えると膝関節へ必要以上の負担がかかることになりますし、骨の健康もそのダメージにどこまで耐えられるかということが関わってきます。
肥満
膝関節と体重は密接な関係にあります。それは、膝が体を支える重要な部位だから。膝関節にかかる負担は立っているだけでも体重の2.5倍、階段では3.2〜3.5倍と言われています。つまり、体重が1kg増えただけでも、膝関節には約3kgの負担がかかっているというわけです。
言い換えると、ダイエットして体重を減らせば膝関節への負担は軽減され、変形性膝関節症の進行を防ぐことにつながります。
O脚・X脚
O脚は脚のゆがみに始まり、重心バランスの崩れ、膝の負担増という風に、膝痛を引き起こす悪循環の元となります。というのも、O脚が重症化すると、股関節、膝関節、足関節の配列が崩れます。そうすると、膝関節への負担も内側に集中してしまうのです。
X脚も変形性膝関節症のリスクがあるといわれています。X脚の場合、膝の外側に負担がかかるため、O脚同様に関節軟骨がすり減るからです。ただし、X脚は黄色人種の日本人に少ない傾向があるため、O脚のほうが注目されることが多いようです。
女性ホルモン
女性ホルモンのエストロゲンには、女性らしい体をつくったり、排卵をコントロールするだけでなく、骨を丈夫に維持する働きもあります。骨の材料となるカルシウムの吸収を助け、骨密度を増加させる作用も持っているのです。変形性膝関節症は60代の女性の約40%、70代の女性にいたってはなんと70%もの人に見られる疾患なのですが、このことから女性ホルモンが大きく変化する閉経の関係も考えられます。
けが
スポーツや事故によるけがが変形性膝関節症を引き起こすこともあります。膝関節のけがはもちろんですが、それ以外であっても、けがの部位をかばって歩いたりすると膝関節に負担がかかります。長く放置することで、軟骨がすり減り重症化してしまうケースもあります。
変形性膝関節症の原因別対処法
それでは、原因ごとに変形性膝関節症の対処法を見てみましょう。
加齢による変形性膝関節症の場合
筋肉や骨の衰えが関係することから、筋力維持や摂取する栄養素を意識してみましょう。
膝関節に無理のない運動
筋肉を鍛えるといっても、関節に負荷がかかるような運動は逆効果。運動しなれない人は、ロコモ体操などの軽いメニューから初めてみるのもいいかもしれません。
※下記は一例です。
骨に良い食事
骨の質に関しては、食事面でフォロー。骨を丈夫にするカルシウムや、カルシウムの吸収を高めると言われるビタミンDの摂取などがおすすめです。カルシウムは小魚や乳製品、海草類、ビタミンDはサンマやサバ、カツオ、鮭に多く含まれます。
また、最近では変形性膝関節症へのおすすめ食材として、アボカドがテレビで紹介されました。骨の重要な成分であるミネラルと、活性酸素を抑えるビタミンEやCが豊富なアボカド。実際に、変形性膝関節症患者にアボカドの脂質成分を投与したところ、痛みや膝関節の機能改善が見られたという報告もあります1)。
肥満による変形性膝関節症の場合
原因のところでも触れましたが、体重が1kg減っただけでも膝関節への負荷は3kg軽減することができます。そのためにも必要なのが、バランスのとれた食事と運動です。
変形性膝関節症で控えるべき食べ物
ダイエットで避けたいのが、極端に食べなくなってしまうこと。これでは必要な栄養が得られず、筋力の低下が危ぶまれます。1ヵ月に1kgずつを目安に、運動をメインにしたダイエットを行ないましょう。
食べるのを控えるなら、カルシウムを体外に排出してしまう恐れのあるカフェインや塩分、カルシウムの吸収を阻害すると言われるリン酸(加工肉食品やインスタントラーメンなど)を意識するのがおすすめです。
膝を健康にするスロージョギング
ダイエットを継続させるコツは、手軽な方法で行なうこと です。特におすすめなのが、いつでもどこでも行なえるジョギングで、特に体力に自信がないという方に試して欲しいのが、スロージョギングです。一般的なランニングと大きく違うのは、とにかくゆっくり走ること。普通に歩く速度よりほんの少し早いペースを保ち、背筋を伸ばして10cmほどの狭い歩幅でちょこちょこ小走りするイメージです。
O脚による変形性膝関節症の場合
日本人に多いO脚の改善法をあげるとすると、1日5分の“立つだけポーズ”がおすすめです。
O脚矯正に効く“立つだけポーズ”
その方法とは、壁を背に立つだけ! この「立つだけポーズ」を約2分、1日3回行うことを1週間続けてみましょう。タイミングは朝、昼、晩が◎。
このポーズを続けることにより、前傾していた骨盤が本来の位置に戻り、O脚矯正の効果が期待できると言われています。また、骨盤周りのお尻の筋肉を使って立つことで、正しい姿勢が身に付きます。1日3回が難しい方は、体のゆがみが出やすい夜だけ行ってもOK。続けることが大切です。
“立つだけポーズ”のやり方
- 「気をつけ」の姿勢で、後頭部、肩甲骨、骨盤、かかとを壁に付ける
- 両かかとは壁に付け、つま先を「ハ」の字に開く
- 骨盤を“立てる”ように起こし、お尻をキュッと締める
- 壁とウエストの隙間は手のひらが入るくらい開ける
- 頭が壁から離れないようにする
※効果には個人差があります。腰痛を起こす場合もあるため、不安な方は一度医師にご相談ください。
女性ホルモンによる変形性膝関節症の場合
更年期から閉経にかけて起こるホルモンバランスの乱れは、女性にとって避け難い問題です。ホルモンの変化とともに自律神経も乱れるので、イライラや気持ちの落ち込み、代謝低下により太りやすくもなります。ホルモン補充療法を受けて、膝の痛みが改善されるケースもあるようなので、専門医にご相談ください。
食事でサポートするなら
エストロゲンに似た働きをする栄養素としては、大豆イソフラボンがよく知られています。豆腐、味噌、納豆など、日本人に昔からなじみの深い大豆食品は、優秀な健康食材でもあります。悪玉コレステロールの働きを抑え、脂肪燃焼効果もあるため、ダイエット中でも安心して採れますね。
けがによる変形性膝関節症の場合
けがが原因の場合は、当たり前ですがまずはけがの治療をする必要があります。平行してケア用品を利用すると、歩行の際の膝関節への負担軽減が期待できます。
膝関節のケア用品:サポーター
膝関節を安定することで痛みを緩和したり、筋肉の硬さをほぐすために関節を保温したり、膝関節内に水が溜まった際に圧迫することで水を散らしたりすることができます。ただし、安定化についてはそれほど期待できず、負担軽減作用は少ないといわれています。
膝関節のケア用品:機能性膝装具
サポーターに似ていますが、主に金属やプラスチックでできているのが特徴です。膝関節を安定させ、サポートすることで痛みを緩和するのが狙いです。取り外しがむずかしく、高価というのがデメリットではあります。
膝関節のケア用品:足底板
靴の底に入れるインソールや、足に直接装着する装具のことです。体重がかかる場所を変えることで負担を減らすという仕組みになっています。
膝関節のケア用品:クッション性のある靴
歩いたときに、膝軟骨に伝わる衝撃を和らげるクッションの役割を果たし、体重のかかり方が変わるので負担を減らすこともできます。
膝関節のケア用品:杖・ステッキ
つきながら歩くと、体重が分散されることから膝の痛みが緩和されます。また、膝関節以外のけがの場合もかばって歩くことを助けるので、膝関節への負担軽減につながります。
まずは病院で変形性膝関節症の原因を知ろう
原因ごとに変形性膝関節症の予防・改善法の一部をご紹介しましたが、やはり正確な原因を知るには病院できちんと診察してもらいましょう。変形性膝関節症の進行具合でもまた対処法は変わってきます。
激しいスポーツや重労働後など、膝の違和感の原因がはっきりしている場合は数日安静にして様子を見るのもいいでしょう。ただ、これまで経験したことのないような違和感や痛みが出た場合は、整形外科の早めの受診をおすすめします。
【参考文献】
1) 「Symptom-modifying effects of oral avocado/soybean unsaponifiables in routine treatment of knee osteoarthritis in Poland. An open, prospective observational study of patients adherent to a 6-month treatment」Piotr Głuszko, Małgorzata Stasiek. Reumatologia 2016; 54, 5: 217-226