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膝に痛みが現れる疾患の代表が、変形性膝関節症。その原因の一つに、筋力の低下が挙げられます。「膝に筋肉なんてないよね?」と思われるかもしれませんが、実は膝の周りにある筋肉が、膝関節と大きく関係しているのです。
今回は、膝の治療を専門としてきたメディカルトレーナーが、膝周りの筋肉を鍛える方法を動画付きでご紹介。なぜ筋肉を鍛えると膝痛が緩和されるのかに加え、トレーニングの興味深い考え方も、記事中で解説しています。すぐに始められるトレーニングばかりなので、膝痛に悩んでいる人は気軽に始めてみましょう!
膝関節と筋肉の関係
膝関節には、起立時には体重の2.5倍、歩行時には3.2倍〜3.5倍もの負荷がかかっています。このようにとても大きな負荷がかかる膝を支えるのが、膝周辺の筋肉です。
膝周りの筋肉が果たす4つの役割
膝周りにある筋肉はいくつかあります。具体的な筋肉を紹介する前に、それらがどんな役割を果たしているのか、まとめておきましょう。
膝関節にかかる負担を軽減する
地面からの衝撃を受け止めて負荷を軽減し、関節内にある軟骨や半月板といった組織を守る役割を果たしています。
膝の曲げ伸ばし動作
筋肉が伸縮することによって、膝の曲げ伸ばしをする役割を担っています。
膝を安定させる
膝の踏ん張りを支え、膝の前後・左右への安定感を高めたり、膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)の位置がずれないようにしたりします。正しい歩行姿勢を保つためにも重要な役割です。
アライメントを調整する
アライメントとは、配置や配列といった意味です。筋肉が骨盤を支えて安定させることで、下肢(脚)の骨や関節のアライメントが保たれます。これによって膝関節への負担は均等になり、O脚やX脚になるのを防ぐことができるのです。
膝関節と深い関係がある筋肉
膝周りの筋肉が膝を支えていることがわかったところで、筋肉とその役割を具体的にご紹介しましょう。
大腿四頭筋
太もも前側の筋肉である大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、膝関節にとって非常に大切です。この筋肉を構成するのは大腿直筋(だいたいちょっきん)、内側広筋(ないそくこうきん)、外側広筋(がいそくこうきん)、中間広筋(ちゅうかんこうきん)という4つの筋肉。それぞれ少しずつ異なる役割を果たしながら、一つの大きな筋肉としても機能しています。
大腿四頭筋の最大の役割は、膝関節に加わる負荷を軽減し、関節内にある軟骨や半月板などの組織を守ること。また、大腿四頭筋を構成する筋肉がバランスよく働くことで膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)の位置を安定させたり、膝を踏ん張ることで膝の前後の安定性を高めたりする役割も果たしています。膝に最も関与する筋肉と言っても過言ではありません。
大腿四頭筋の役割
- 膝関節にかかる負担を軽減する
- 膝を伸ばす動作
- 膝を安定させる
内転筋群
太ももの内側にある大内転筋(だいないてんきん)、長内転筋(ちょうないてんきん)、短内転筋(たんないてんきん)、薄筋(はっきん)、恥骨筋(ちこつきん)の総称を、内転筋群(ないてんきんぐん)と言います。
内転筋群は骨盤の安定感を保持するのに大きな役割を果たす筋肉。左右へのここが弱くなると、ヨタヨタと不安定な歩き方(トレンデレンブルグ歩行)や、片足立ちした際に膝が外側にぶれるラテラルスラストという現象が起きやすくなります。
内転筋群の役割
- 膝を安定させる
- アライメントを調整する
臀筋群
お尻には大臀筋(だいでんきん)、中臀筋(ちゅうでんきん)、小臀筋(しょうでんきん)の3つの筋肉があります。それらの総称を臀筋群(でんきんぐん)と言います。
臀筋群は、座った状態からお尻を持ち上げる動きを助ける筋肉。楽にお尻を持ち上げることができれば、そのぶん膝への負担は軽減されます。また、骨盤を支えてずれないようにすることで、下半身のアライメント(骨や関節の並びのバランス)を調整させる役割も重要です。臀筋群が弱いと下半身のアライメントが崩れ、どちらかの膝関節へ負担が増大するといったことにも繋がります。膝とお尻は遠いようにも思いますが、臀筋群は膝にとって非常に重要な役割を果たしているのです。
臀筋群の役割
- アライメントを調整する
- 膝関節にかかる負担を軽減する
ハムストリングス
膝裏から太ももの裏側にかけて伸びる、大腿二頭筋(だいたいにとうきん)、半膜様筋(はんまくようきん)、半腱様筋(はんけんようきん)の3つの総称を、ハムストリングスと言います。膝関節を曲げる動作、股関節を伸ばす動作を担っていて、ハムストリングスが伸び縮みすることで、人は立ったりしゃがんだりすることができるのです。
ハムストリングスの役割
- 膝を曲げる動作
腓腹筋
腓腹筋(ひふくきん)は、ふくらはぎの筋肉。とは言っても、膝にまたがるようにして存在しているため、膝を曲げる動作を助ける役割を果たしています。
腓腹筋が弱くなると、膝に力が入らず歩くスピードが落ちたり、スムーズな立ち上がりができなくなったりすることも。ふくらはぎもバランス良く鍛えることで、膝への負担をより軽減することができるでしょう。
腓腹筋の役割
- 膝を曲げる動作
筋力トレーニングの考え方
膝痛を緩和・予防するためには、膝周りの筋肉を鍛えるのが効果的。具体的な方法を知る前に、トレーニングについての興味深い考え方を知っておきましょう。膝周りに限ったことではありませんが、参考になることも多いはずです。
筋肉の鍛え方は2種類
膝の痛みの緩和・防止に効果的な筋肉の鍛え方には、2つの種類があります。聞き慣れない名前かもしれませんが、それぞれOKC、CKCと言います。
OKC(開放性運動連鎖)
OKCとは、Open Kinetic Chainの略語で、開放性運動連鎖と言います。これは、手先や足先を地面から離す、つまりベッドの上や座った状態などで行う運動のこと。立った状態が難しい人や、あまり負荷をかけずにトレーニングしたい人に向いています。日常生活での動作と違ったものが多く、トレーニングの導入段階で用いられることが多いでしょう。
CKC(閉鎖性運動連鎖)
CKCとは、Closed Kinetic Chainの略語で、閉鎖性運動連鎖と言います。これはOKCと対照的に、手先や足先を地面に付けた状態で、負荷をかけながら行うトレーニングのこと。有名なものでは腕立て伏せやスクワットが挙げられます。OKCよりもCKCのほうが、日常生活での動作に近しいものが多いと言えるでしょう。また、他の筋肉との協調性を鍛えるトレーニングも、CKCで行います。
OKCとCKCを状況に応じて使い分ける
まずはOKCで目的の筋肉にアプローチするのが望ましいです。というのも、膝に痛みがある人は運動機能が低下していることが多いため。膝に痛みを感じると、運動を控えるようになる人が多いです。運動しないとますます筋肉は衰え、日常動作にも影響が……。というケース、少なくありません。
そうした場合は、まずどのような動作を獲得したいかを考え、目的の筋肉を絞ってアプローチします。変形性膝関節症を始めとする膝の疾患なら、大腿四頭筋が多いでしょう。膝が痛むときは、負荷をかけずに行えるものからスタートします。そのトレーニングができるようになったら、ターゲットとして鍛えた筋肉と他の筋肉を一緒に使えるよう、新たなトレーニングを始めていきます。これがCKCの考え方です。
OKCからCKCへの移行は、疾患や状況を考慮して行います。歩行訓練や段差を使うなどし、OKCで鍛えた筋肉と他の筋肉とを協調して動かせるように、トレーニングをしていきます。
今日からできる5つのOKCで膝の筋肉を強化
変形性膝関節症を含む膝の関節痛にどのようなトレーニングが効果的なのか、ここでは導入段階として、OKCによるトレーニングをご紹介していきましょう。
①大腿四頭筋のトレーニング「セッティング」
メディカルトレーナーが最もおすすめするのは、セッティングと呼ばれる大腿四頭筋のトレーニング。座った状態で行うので、膝に負荷をかけることなく鍛えられます。膝の手術後のリハビリとしても行われている、メジャーなトレーニングです。
- 丸めたバスタオルを用意し、手術した足を伸ばして座りましょう。
- 膝が伸びきる人は膝のお皿より上の太もも下に、伸び切らない人はお皿より下のふくらはぎ下に、タオルを敷きます。
- つま先を天井に向け、敷いたタオルをつぶすように太もも前面の内側に力を入れ、5〜10秒キープ。
- これを連続で5〜10回、1日3セットを目標の目安に行いましょう。
②内転筋群のトレーニング「アダクション」
内転筋群を鍛え、膝を安定させるトレーニングです。横になった状態で行うので、こちらも膝への負荷は最小限にとどめられます。
①横向きに寝そべり、下の足を伸ばし、上の足は膝を曲げた体勢からスタート。
②下にある伸ばした足をゆっくりあげていきます。最初は10cmくらいで構いません。
③このとき、上半身の姿勢が崩れたり、あげた足の膝が曲がらないよう注意しましょう。
④3秒かけて足をあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットが目安です。
③臀筋群のトレーニング「アブダクション」
膝への負荷を抑えつつ、臀筋群を鍛える方法です。横になって足を上げ下げする運動で、大臀筋、中臀筋、小臀筋をすべて効率よく鍛えることができます。足をあげる高さはできる範囲で構いません。
- 上から見たときに、頭・肩・骨盤・膝・足首が一直線になるよう、横向きに寝そべります。
- 膝を伸ばしたまま、上にある足のかかとを天井に近づけるイメージであげていきます。
- 腰が反ったり、膝が曲がったり、つま先が天井に向いたりしないよう気をつけましょう。
- 3秒かけて足をあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットを目安に行います。
④ハムストリングスのトレーニング「レッグカール」
寝そべった状態でできるため、膝関節への負担はそれほどかかりません。自重でも効果は得られますが、膝の痛みが軽い人であれば、水を入れたペットボトルやダンベルを足に挟んで調整してみましょう。
- うつ伏せで両足を揃えたまま、かかとをお尻につけるように膝を曲げます。
- 太ももの裏側に力が入るよう意識しましょう。
- 膝を曲げるときに、お尻が浮かないように注意してください。
- 3秒かけて膝を曲げ、3秒かけて戻します。これを10回、1日3セットを目安に行います。
⑤腓腹筋のトレーニング「カーフレイズ」
脚を地面に着き立位で行っていることから、ややCKC寄りと言えるかもしれません。ただ、壁やイスを使うことで、ぐらつきを防いだり負荷を軽減したりすることは可能です。実際に、人工膝関節置換術という膝の大きな手術後にもリハビリとして行われています。
- 壁や椅子に手を置き、立った状態を安定させて行います。
- 膝を伸ばしたまま、かかとをゆっくりあげていきましょう。
- 3秒かけてあげ、3秒かけて下ろす運動を10回。1日3セットが目安となります。
膝の筋肉は順序よく適切に鍛えよう!
ここでご紹介したOKCだけでも、膝痛緩和・予防の効果は十分に期待できます。しかし、膝に痛みがあるということは、身体のどこかに歪みや不安定な部分があるということ。OKCで痛みが改善されたら、そうした部分を正常な状態に戻すトレーニング、つまりCKCの出番です。どういった方法で行うのか、それは正しい判断のもとで行うのがベスト。一度、お近くの病院の医師やメディカルトレーナー、理学療法士などに相談するとよいでしょう。痛みのない人はジムなどで、負荷の大きいCKCを行うのも効果的です。