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膝に痛みを感じるようになって久しい。少しずつ痛みが強くなってきたかもしれない。そんな方はいませんか? そしてその痛みが膝の「内側」だったら、要注意。変形性膝関節症という疾患の可能性が考えられます。
変形性膝関節症で膝の内側が痛むのはなぜか、この疾患の注意すべき点はどこなのか。医師がまとめてお話しします。
3000万人の日本人が患う疾患の兆候?
膝の内側が痛いとき、原因のひとつとして考えられるのが、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)です。よくテレビで取り上げられることもあって、病名は聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。「まさか私が」と思っていても、決して他人事ではないのがこの疾患。というのも、潜在的な患者を含めて3000万人の日本人が患っているとされるからです。
また、加齢に伴って罹患率が高くなるのも変形性膝関節症の特徴。80代では7割以上が患っているとされており、これは国民病とも換言できるでしょう。ただし、若年層に全く発症しないというわけではありません。膝の前十字靭帯や半月板を損傷したことのある人は、変形性膝関節症の発症リスクが高まるという報告も[1]。激しいスポーツをしていた人などは若くても発症の可能性はあるため、軽視は禁物です。そんな変形性膝関節症とは一体どんな疾患なのか、なぜ膝の内側が痛くなるのか、具体的に見ていきましょう。
[1]「Anterior cruciate ligament reconstruction and knee osteoarthritis」Nikolaos K Paschos, World J Orthop. 2017 Mar 18; 8(3): 212–217.
変形性膝関節症とは
膝関節は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)とすねの脛骨(けいこつ)で形成されています。それぞれの骨の表面を覆う軟骨がすり減ることで発症するのが、変形性膝関節症です。病名にあるように膝関節は次第に変形していき、その過程で様々な症状が現れます。代表的な症状に膝の内側の痛みがあるわけですが、その理由はあとで詳しくお話するとして、その他の特徴的な症状も知っておきましょう。
膝の内側の痛み以外の症状
変形性膝関節症の症状として多い膝の内側の痛み。それ以外にも次のような症状が思い当たれば、危険信号かもしれません。
- 膝の違和感……膝がこわばる、曲げづらいなどの違和感が生じます。
- 動き始めの膝の痛み……歩き出し、立ち上がりの際に膝が痛みます(スターティングペイン)。
- 膝が伸びづらい……膝が真っすぐ伸びづらくなります。
- 階段での膝の痛み……階段の昇降時に、膝に痛みを感じます。
- 正座がつらい……膝を大きく曲げる、正座などの姿勢がつらくなります。
- 膝が鳴る……膝を曲げ伸ばしする際などにパキパキと音がしたり、ミシミシ、ゴリゴリと鳴ったりします。
- 膝に水がたまる……膝に水がたまり、腫れ上がります。
恐ろしいのは進行性であること
変形性膝関節症の怖さは、時間の経過とともに進行していくという特徴にあります。初期から末期までの膝関節の状態をイメージしたのが、この図。すり減った軟骨によって、膝関節を覆う滑膜(かつまく)が刺激され炎症が起きるのが、痛みの原因です。
進行すると、軟骨組織の損傷は半月板(はんげつばん)にまで及び、関節内の炎症はさらに悪化していきます。末期にもなれば、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合うまでに……。膝関節は著しく変形し、激しい痛みが続きます。最悪の場合には寝たきりになってしまうこともある疾患が、変形性膝関節症なのです。
症状に気づいたときには進行していることも多い
変形性膝関節症は、K-L分類と呼ばれる指標に基づいて進行度を判断します。これはX線画像を用いたもので、進行度の単位をグレードと言います。目安としてはグレード1が予備軍、グレード2が初期、グレード3が進行期、グレード4が末期です。下の画像がそれぞれのグレードの膝関節の状態を表しているのですが、関節裂隙(かんせつれつげき)という関節の隙間が徐々に狭まり、膝関節が変形していくのがわかります。
この疾患の厄介な点は、グレード1〜2では目立った症状が見られない場合も多いということ。痛みや違和感に気づいたときにはグレード3や4まで進行しているケースも少なくありません。
変形性膝関節症で膝の内側が痛くなるのはなぜ?
膝の痛みは変形性膝関節症を象徴する症状ですが、なぜ膝の中でも内側に痛みが生じやすいのか。それはこの疾患の特徴と、日本人の身体的特徴から読み解くことができます。
変形性膝関節症の「内側型」と「外側型」
なぜ膝の内側が痛くなるのか知るためには、変形性膝関節症のある特徴についても知っておく必要があるでしょう。
大腿骨と脛骨それぞれの先端には、顆(か)という出っ張りが2つずつあり、身体の内側を内顆、外側を外顆と言います。変形性膝関節症はこのどちらかの顆が集中的にすり減ることが多く、内顆の場合は内側型(ないそくがた)、外顆の場合は外側型(がいそくがた)と分類されます。つまり膝の内側の痛みは、内側型の変形性膝関節症の可能性を示唆していると考えることができるのです。
O脚なら内側型、X脚なら外側型になりやすい
こちらの図から分かるように、O脚では膝の内側、X脚では膝の外側に負荷が集中します。そのためO脚の場合は内側型、X脚の場合は外側型の変形性膝関節症になりやすいのです。
日本人の変形性膝関節症は、9割が内側型
もともと日本人にはO脚の人が多く、変形性膝関節症を発症した場合、ほとんどが内側型だそう。その割合はなんと9割以上という報告もあります[2]。変形性膝関節症が女性に多い疾患で、日本人女性の8〜9割がO脚であるとされていることを勘案しても、納得の数値と言えるでしょう。こうしたデータからも、変形性膝関節症になると膝の内側が痛みやすくなるのだということが分かります。
[2]白倉賢二「変形性膝関節症のリハビリテーション」(2005)
変形性膝関節症の可能性をセルフチェック
「膝の内側は痛いけど、これだけで変形性膝関節症と言えるのかわからない」そんな方は、まず下記のセルフチェックを行ってみましょう。当てはまる項目はいくつありますか?
①膝が腫れる
②初動時に痛みがある(例:立ち上がる時の痛み)
③夜間痛がある
④しゃがめない(和式トイレ不可)
⑤正座ができない
⑥歩行時痛がある
⑦走れない
⑧階段は上りよりも下りで膝痛が辛い
⑨過去に膝を痛めたことがある
⑩スポーツをしているorスポーツをしていた
⑪O脚 or X脚だ
⑫肥満体系である
⑬膝を真っすぐに伸ばすことができない
⑭筋肉が落ちた
⑮膝の曲げ伸ばしで音が鳴る
5個以上当てはまったら要注意!少なくても安心は禁物
上記の項目で当てはまるものが5個以上あれば、変形性膝関節症の可能性があります。痛みが増している、痛みを感じない日がない、といった場合は危険水域。すぐに病院で診断を受けるのが望ましいでしょう。
ただし、チェックが多ければ多いほど注意すべきですが、少ないから安心というわけでもありません。膝関節に痛みがありチェックが入っているということは、変形性膝関節症の予備軍である可能性は十分に考えられるからです。
早めの確定診断と治療開始を推奨します
ここまでお話ししてきたように、変形性膝関節症は高齢になるほど罹患率も高く、目安としては40代以上なら特に注意が必要です。膝の内側に痛みを感じたり、他の症状が出始めたりしたら、早めに病院を受診してください。
また、膝の内側の痛みには、鵞足炎(がそくえん)やタナ障害といった疾患の可能性も考えられます。休日にスポーツをする人や、趣味でロードバイク、ランニングなどを嗜む人も多いでしょう。つい動きすぎてしまい筋肉痛になったという経験のある人は、スポーツ障害、つまり”使いすぎ”によって生じる疾患の可能性も。不安があれば、やはり病院で確定診断を受けるのが望ましいでしょう。いずれの場合も、早めに治療を始めるに越したことはありませんからね。もし「変形性膝関節症ではなさそう」と思った方は、膝の内側が痛い原因を別記事でまとめていますので、チェックしてみてください。