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人工膝関節置換術を検討中。だけど「術後のリハビリって痛くないかな……。大変で続けられなかったら……。」と不安で手術をためらっている方、いませんか? もう手術が終わっている方も、リハビリの先が見えずお悩みではありませんか? そんな方こそ今回のお話で、手術に、リハビリに、明るい未来を見出せるはずです。
今回お話するのは、リハビリの本当の目的とその重要性。さらに記事の途中では、退院後に家でもできるリハビリをメディカルトレーナーがご紹介しています。
人工膝関節置換術は安定した結果が期待でき「人生を変える」とも言われることのある手術です。この記事を読めば、それが皆さんにも現実的に思えてくるでしょう。
人工膝関節置換術のリハビリに期待できる効果
人工膝関節置換術について医師が必ず説明すること、それは「術後のリハビリこそ重要」ということ。いくら性能の良い人工関節を用いても、リハビリを適切に行わなければ、人工関節はその機能を存分に発揮できないからです。
術後のリハビリが辛そう、と不安な方も多いことでしょう。確かに、目的が分からずリハビリを続けるのは苦痛かもしれませんね。でも、ちゃんと目的を知って実践すれば、次のような効果をもたらしてくれる強力な手段となります。
①膝周辺の筋肉を鍛え、膝関節への負担を軽減する
人工関節にして痛みがなくなっても、手術前に引き続き、膝関節への負担を軽減しましょう。頻度は多くありませんが、人工関節への負担が増えると、ゆるみや破損を起こすことがあるためです。
では、どうしたらよいか。ポイントとなるのが、太もも前側の大腿四頭筋や太もも裏側のハムストリングスです。膝周辺にあるこれらの筋肉には膝関節へかかる負担をカバーする役割があるため、しっかり鍛えることで膝が安定するのです。
人工膝関節置換術を検討するということは、痛みが強く日常生活にも支障が出ているケースが多いはず。あまり身体を動かさずじっとしている、という方も多いのではないでしょうか。その状態では、膝関節への負担をカバーする筋肉も減ってしまっていると考えられます。だからこそ、そうした筋肉を鍛えるリハビリが大切なのです。
こちらのグラフは、20歳以降の筋肉量の変化率を表したものです。じっとしていることで筋肉が減る、ということを差し引いても、年齢に比例して筋肉量は少なくなります。つまり高齢であればあるほど、より丁寧なリハビリが必要になることがお分かりいただけるでしょう。「でも、筋肉量がこれだけ減っていくなら、鍛えても効果がないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、こんな興味深い例があります。
かつて当院のメディカルトレーナーがサポートした、80代の女性のお話です。膝や腰の痛みに悩んでいたその女性は、膝周りを鍛えることを決意。1年ほどトレーニングを継続した結果、杖なしでも歩けるまでに改善されたのです。その女性は人工関節を膝に入れていたわけではありませんが、膝関節への負担を軽くするトレーニングは、たとえ関節が人工のものになっても、同様に効果的。年齢でリハビリを諦める必要は全くありません。
②膝関節の拘縮を防ぎ、可動域制限を解消する
拘縮(こうしゅく)とは、関節が固まって動きが悪くなってしまうこと。人工膝関節置換術の術後には特に起こりやすくなります。筋肉の柔軟性が低下することが主な原因で、加齢に伴って自然に生じることも少なくありません。
膝関節に拘縮が起こると、可動域制限(膝の動く範囲に制限)が起きたり、曲げ伸ばしに伴うこわばりや違和感を覚えたりします。しかし、手術後にしっかりとリハビリを行うことで、こうしたリスクを軽減することができるでしょう。
③身体全体のバランスを整え、人工関節の適応を早める
人工膝関節置換術の術後に行うリハビリにおいて、膝周辺の筋肉は特に重要。でも、膝周辺だけでなく、身体全体の筋力やバランスも、実は大切なのです。
筋力や筋肉の柔軟性が不足しているとき、人の身体は無意識のうちに姿勢を崩し、別の動作で補おうとする代償運動をします。例えばヨタヨタと不安定な歩き方(トレンデレンブルグ歩行)になるのは、お尻の外側にある中殿筋や小殿筋に問題があるため。こうした代償運動の連続によって部分的に負担がかかり続けると、身体に歪みが生じ、膝以外の部位まで痛めやすくなる可能性があります。
人工関節はその名の通り、人工物。身体に馴染むまでには時間を要します。術前とは異なる身体の使い方が必要なケースも出てくるでしょう。人工関節を身体の一部として正しく使いこなすためにも、筋力や筋肉の柔軟性に加え、体幹(身体全体のバランス)を鍛えるのが望ましいです。リハビリを担当してくれる理学療法士と相談し、適切なリハビリを進めていきましょう。
人工膝関節置換術の術後に必要なリハビリ期間
リハビリの重要性はお分かりいただけたと思いますが、気になるのがリハビリの内容や期間ですよね。人工膝関節置換術の術後に必要なリハビリ期間は、6ヶ月〜1年程度と言われています。基本的には手術を行った病院で行うことが多く、入院期間中は医師や理学療法士の指導のもと行うことが多いでしょう。
人工膝関節置換術には痛みの大幅な緩和が期待できますが、術後しばらくは痛みが続くケースも。これは膝関節の周辺に軟部組織(筋肉や脂肪)が少なく、手術に伴い出た血液が吸収されにくいことや、人工関節がまだ馴染んでおらず身体に大きな負担がかかっていることなどが原因とされます。ただ、そのような痛みも3〜6ヶ月で和らいでいくことが多く、リハビリの経過とともに緩和されると言えるでしょう。
人工膝関節置換術の術後に行うリハビリのプロセス
患部の状態やリハビリの様子によっても異なりますが、人工膝関節置換術の術後には、目安として以下のようなスケジュールでリハビリを行うことになります。
手術翌日
「手術の翌日から動いていいの!?」と思われるかもしれませんが、術後はなるべく早い段階でリハビリを開始すべきとされています。これは、術後にじっとしていることによる血栓症(エコノミークラス症候群)、すなわち血管のつまりを防ぐため。
とはいえ、病室のベッドから下りて歩き回るわけではありません。ベッドの上で足首を回すなど、軽い運動から始めていきます。
術後3日程度
血液が溜まらないようにするため膝に挿入していたドレーン(チューブ)が外れたら、ベッドサイドで立位保持(立った状態を保つ)訓練や、病室の外に出て膝の曲げ伸ばし運動を行います。
術後1週程度
平行棒につかまったり、杖をついたりしての歩行訓練を行い、少しずつ負荷をかけていきます。
術後2週程度
階段の上り下りなど、負荷の大きな動きを開始します。
術後3〜4週程度
病院でのリハビリが思うように進んでいない場合は、リハビリ専門施設へ転院するケースも。専門施設でもリハビリの内容は上記と同様、筋力をつけたり、膝関節の可動域を広げたりすることを目的としたものが中心です。リハビリが順調に進んでいると医師や理学療法士が判断した場合、退院し帰宅が可能になります。
人工膝関節置換術の退院後も継続!家でできるリハビリ集
退院してからも、しばらくはリハビリを続けるのが望ましいです。膝関節への負担をカバーする筋肉を継続して鍛えましょう。とは言え、無理のない範囲でというのは大前提です。ここでは、家でもできる簡単なリハビリをご紹介します。
人工膝関節置換術後のリハビリ①「膝の曲げ伸ばし運動」
太もも前側の筋肉、大腿四頭筋(だいたいしとうきん)を鍛えるリハビリ運動です。人工関節の手術後に限らず、変形性膝関節症の予防目的でも一般的に行われています。
「膝の曲げ伸ばし運動」の目的
- 膝周辺の筋肉を鍛え、膝関節への負担を軽減する
- 膝関節の拘縮を防ぎ、可動域制限を解消する
「膝の曲げ伸ばし運動」のやり方
①椅子にすわった状態で、まず2秒間かけて膝がまっすぐになるよう伸ばしていきます。
②同じく2秒間かけて足を下ろし、膝を曲げます。 1日合計100回程度が目標です。
※膝が伸び切らない人や曲がりづらい人は、無理をしないようにしましょう。
人工膝関節置換術後のリハビリ②「膝裏でタオルつぶし運動」
こちらも大腿四頭筋を鍛えるためのトレーニング。ベッドでもできるので、術後すぐに病院で行われることも多いですが、退院後も引き続き行うのがおすすめです。
「膝裏でタオルつぶし運動」の目的
筋肉を鍛え、膝関節への負担を軽減する
「膝裏でタオルつぶし運動」のやり方
① 丸めたバスタオルを用意し、手術した足を伸ばして座ります。
② 膝が伸びきる人は膝のお皿より上の太もも下に、伸び切らない人はお皿より下のふくらはぎ下にタオルを敷きます。
③つま先を天井に向け、タオルをつぶすように、太もも前面の内側に力を入れ、5〜10秒キープ。これを連続で5〜10回、3セットが目標の目安です。
人工膝関節置換術後のリハビリ③「かかとの上げ下げ運動」
ふくらはぎの筋肉である腓腹筋(ひふくきん)を鍛えるのが、カーフレイズと呼ばれるトレーニングです。腓腹筋はふくらはぎから膝にまたがる筋肉で、膝の曲げ伸ばしをスムーズにする働きがあります。
「かかとの上げ下げ運動」の目的
筋肉を鍛え、膝関節への負担を軽減する
「かかとの上げ下げ運動」のやり方
①まず、立った状態で壁や椅子に手を置き、体を安定させます。
②かかとをゆっくりあげていきます。このとき、膝が曲がらないよう注意してください。
③3秒かけて上げ、3秒かけて下ろすという運動を10回。3セットを目安に行いましょう。
人工膝関節置換術後のリハビリ④「太もも裏の運動」
寝そべった状態でできるレッグカールというトレーニングです。寝る前やテレビを見ながらできますね。膝へそれほど負担をかけず、太もも裏のハムストリングスを鍛えることができます。
「太もも裏の運動」の目的
- 筋肉を鍛え、膝関節への負担を軽減する
「太もも裏の運動」のやり方
①うつ伏せになって両足を揃えたまま、かかとをお尻につけるように膝を曲げます。
②太ももの裏側に力が入るよう意識しましょう。膝を曲げるときに、お尻が浮かないように注意してください。
③3秒かけて膝を曲げ、3秒かけて戻す運動を10回。これを1日3セットほど行います。
※膝が曲がりきらない場合は、無理をしてはいけません。
人工膝関節置換術後のリハビリ⑤「足の上げ下げ運動」
お尻の筋肉、殿筋群(でんきんぐん)を鍛えるリハビリ運動で、アブダクションと呼ばれるものです。
「足の上げ下げ運動」の目的
身体のバランスを整え、人工関節の適応を早める
「足の上げ下げ運動」のやり方
①まず、横向きに寝そべります。 上から見たとき、頭・肩・骨盤・膝・足首が一直線になるようにするのがポイント。
②膝を伸ばしたまま、かかとを天井に近づけるイメージで足をあげていきます。このとき、腰が反ったり、背中が丸まったり、膝を曲げたりしないよう注意してください。
③3秒かけて上げ、3秒かけて下ろすという運動を10回、3セットを目標に行います。
人工膝関節置換術の術後におけるリハビリの禁忌
術後のリハビリは積極的に行うべきですが、リハビリを含めた日常生活での禁忌(やってはいけないこと)も存在します。
手術をした脚から階段の上り下りをすること
術後2〜3週間ほど経つと、階段を使ったリハビリが開始されることが多いです。ここで注意が必要なのが、手術をしていない脚を先に出すこと。人工関節が完全に馴染むまでは時間がかかります。その間に大きな負担をかけることは、できるだけ避けたいところです。
両脚に人工膝関節置換術を受けた場合は、筋力の強いと思われる脚から出すのがよいでしょう。これについては、病院でリハビリを行う際に理学療法士の指導があるかと思いますが、退院後の日常生活でも注意してください。
床に膝をつくこと
人工関節が身体に馴染んでからも、衝撃を与えることは避けるのが望ましいです。激しいスポーツはもちろん、日常生活においても、できる限り膝を床につけないように気をつけましょう。膝をついた状態でひねると、人工関節が脱臼を起こしてしまう可能性があります。
人工膝関節置換術のリハビリを乗り越えた先には明るい未来が!
手術後の満足度96%というデータもあるなど、人工膝関節置換術には高い効果が期待できます。適応外となる疾患を持つ場合を除き、リハビリをしっかり行う意欲さえあれば、年齢も不問。90歳を超えてから初めて人工膝関節置換術を受けた方もいらっしゃいます。リハビリを乗り越えて歩けるようになり「人生が変わった」と喜ぶ声も多数。
・「元気になったね~」ってみんなに驚かれています。手術をして歩きやすくなりましたし、腰もシャンとしてね、背がいくぶんか伸びたみたい(笑)。車にも自転車にも乗ります。
・旅行に行きたいですね。来週は早速淡路島に行くつもりです。そして、手術の前に中断した書道、これも再開したいと思います。
・健康になった現在、手術を受けたのは大正解だったと思います。(中略)毎日元気に生活ができるようになっただけでなく、あきらめていた社交ダンスが十年ぶりにできるようになって、生き生きと過ごしています。
リハビリが思うように進まず、つらい思いをすることがあるかもしれません。そんなときは、担当の理学療法士に思い切り頼ってみましょう。こういった場面は、理学療法士の腕の見せ所。あなたに合ったリハビリを親身になって考えてくれるはずです。また、リハビリのモチベーションを保つために、お気に入りの理学療法士を見つける、褒めてもらうために頑張る、自分にご褒美を用意するといった小さな楽しみを作ってみるのも一つの方法。「手術をして終わり」ではなく、手術後のリハビリがその後の人生を左右するカギになります。
【出典】関節が痛い.com「体験談のページ」より、関連箇所を抜粋
一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会「患者さんの声」より、関連箇所を抜粋
人工膝関節置換術に関する経験者・非経験者ギャップ調査/株式会社QLife