ひざ痛チャンネル編集部
2017-12-29

【整形外科医が解説】ロードバイクで起こる膝痛の原因と対処法

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【整形外科医が解説】ロードバイクで起こる膝痛の原因と対処法

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自転車は膝に低負担な運動と言えど、ロードバイクとなると膝痛が切っては切れない悩みの種。どうにか痛みをなくそうと、サドルのポジショニングや自転車を漕ぐフォーム、ペダルの踏み方などを色々工夫されていることと思います。ただ、それでも膝痛が改善されないという人も少なくないのでは? だったら、原因は筋肉や骨にあるかも。

ここでは整形外科の視点から、ロードバイクで起こる膝の痛みの原因を追求。また、どうすれば痛みが和らぐのかについてもアドバイスします。読めばきっと、あなたの膝痛対策のヒントになるはずです。

 

ロードバイクで膝が痛くなる自転車以外の原因

ロードバイクでの膝痛

自転車の調整やフォームの改善をしても、ロードバイク中に膝痛が消えないとしたら、原因はオーバーユースの可能性が高いと考えられます。実はこのオーバーユース、練習量だけでなく、身体の状態も関係するのです。主に次のようなことがあげられます。

・筋力不足
・筋肉が硬い
・関節のアライメント不良

あなたの膝の痛みがこれらのどれによるものかは、膝痛が生じている箇所から考えられる疾患によっても異なります。

 

ロードバイクで膝痛が起こる位置は?

では、まずはあなたの膝痛の位置を確認しましょう。ロードバイクによって膝の痛みが生じる位置としては、主に次の4つが考えられます。

 

膝の外側が痛い

最初は一定の距離を自転車で走り終えた後に感じ、少し休むと消えるといった症状が特徴。それから、ロードバイク中にも膝の外側に痛みを感じるようになり、安静にしてもなかなか膝の痛みが消えにくくなっていきます。

 

膝の内側が痛い

ロードバイク中、もしくは自転車から降りた後に痛みが生じます。だいたいは、休むと治まるものかと思われます。また、こういった症状に悩まされる人は、膝の内側を押しても痛みを感じることが多いでしょう。

 

膝上が痛い

こちらも同じく、ロードバイク後に現れ、安静にすると治まる膝の痛みが特徴です。痛みの他には、膝の曲げ伸ばしづらさも感じることがあります。また、膝上から足の付け根まで痛みが広がることも。

 

膝裏が痛い

膝の裏側の場合、伸ばしたときに痛みを感じることが多いでしょう。他の膝の位置の痛みのように休むと治まることもあれば、2〜4日間ほど腫れや痛みが生じ、2週間くらいで落ち着くという症状が出ることも考えられます。

 

ロードバイクで起こる膝痛の種類とチェック方法

これらの症状に心当たりのある人は、なんで痛いのか、どこが悪いのか気になりますよね。痛む位置から、次のような疾患の可能性が考えられます。セルフチェック法も合わせてご紹介しましょう。

 

膝の外側が痛い原因「腸脛靭帯炎」

腸脛靭帯炎(ランナー膝)

腸脛靭帯は、太もも外側の大腿筋膜張筋から移行し、脛骨(けいこつ:すねの骨)までをつないでいる長い靭帯。自転車のペダルをこぐような長時間に及ぶ膝の曲げ伸ばし運動で、腸脛靭帯と大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)が必要以上に擦れ合い、膝の外側部分の靭帯に炎症が起こります。これが、腸脛靭帯炎です。ロードバイクの場合、オーバーユースもそうですが、サドルが高いことで起こりやすい疾患です。

腸脛靭帯炎のチェック方法

腸脛靭帯炎かどうかを見極める検査に、グラスピングテストという徒手検査あります。横になった状態で疑わしい膝を90°に曲げ、膝の外側を手で圧迫したまま少しずつ膝を伸ばしていく方法です。これによって痛みが生じる場合、腸脛靭帯炎の可能性が高いと言えます。

 

膝の内側が痛い原因1「鵞足炎」

鵞足炎とは

膝の内側の少し下あたりには、太もも内側の3種の筋肉「縫工筋(ほうこうきん)」「半腱様筋(はんけんようきん)」「薄筋(はっきん)」の腱が脛骨につながっている、鵞足という部分があります。鵞足炎は腸脛靭帯炎同様、膝の過剰な曲げ伸ばしで鵞足が脛骨と摩擦して炎症。3つの腱が集まっているので、腱同士が擦れ合うということもあります。足先が内側に向いたペダリングで摩擦しやすい部位だと言えるでしょう。

鵞足炎のチェック方法

膝の内側に痛みが生じる疾患に、変形性膝関節症や半月板損傷があります。これらには関節の可動域制限を起こすことが多いのですが、鵞足炎には特にそれは見られません。また、症状でも触れたように、膝の内側を押すと痛みを感じるという特徴があります。

 

膝の内側が痛い原因2「タナ障害」

関節内に4つある滑膜ヒダ(関節を覆う滑膜がヒダ状になっている部分)のうち、大腿骨と膝蓋骨(しつがいこつ:膝のお皿)の間に位置するものが「タナ」です。形状が棚に似ていることから、そう呼ばれています。胎児のとき一次的に形成される組織で、新生児の半数ほどは生まれる頃にはなくなっていますが、存在自体が問題というわけではありません。膝の曲げ伸ばしでタナが骨と擦れたり、関節の間に挟まったりして炎症することで痛みが生じるのです。これがタナ障害。タナの形状は様々ですが、太くて厚みのあるタナの場合ロードバイクに限らず、日常で起こり得る疾患と言えます。

タナ障害のチェック方法

この疾患の特徴は、音です。屈伸するときに「パキッ」「コリッ」などの音がする場合、タナ障害の可能性があります。また、膝にひっかかり感を感じる場合、タナが関節に挟まっていることも考えられます。

 

膝上が痛い原因「大腿四頭筋炎」

膝は大腿四頭筋の伸縮運動によって曲げ伸ばしされます。つまりロードバイクでは、ペダルを漕ぐ上でとても重要な筋肉ということ。そのため、過剰なトレーニングでこの筋肉を使い過ぎると、外側広筋・内側広筋・中間広筋・大腿直筋といった大腿四頭筋のいずれかで炎症が発生し、膝上が痛むようになります。特に大腿直筋は、膝蓋靭帯を通して膝関節をまたがっているため、影響が出やすいと考えられるでしょう。

大腿四頭筋炎のチェック方法

大腿四頭筋炎の症状として腫れは起こりにくく、腫れている場合は腱の損傷や肉離れが疑われるでしょう。また、大腿直筋に関して言うと、エリーテストという徒手検査があります。方法は、うつ伏せに寝た状態で、他の人に手伝ってもらい足のかかとがお尻につくよう曲げるというもの。このとき、お尻が浮き上がって股関節が曲がるようであれば、大腿直筋が伸びづらくなっている状態と言えます。

 

膝裏が痛い原因「下腿三頭筋の炎症」

下腿三頭筋とはふくらはぎの筋肉で、「腓腹筋(ひふくきん)」「ヒラメ筋」の総称です。これらふくらはぎの筋肉もペダリングで使用。そのペダリングの方法(アンカリングなど)や過度のトレーニングで、炎症を起こしてしまうことがあります。

下腿三頭筋の炎症のチェック方法

膝裏からふくらはぎに向けて押していき、痛みを感じるようであれば下腿三頭筋の炎症が疑われます。

 

 

ロードバイクで膝が痛くなる原因の詳細

あなたの膝痛に疑われる疾患が分かったところで、冒頭で触れた、自転車やフォーム以外の3つの原因について詳しくご説明します。それぞれで起こりやすい膝疾患が異なります。

 

原因1:筋力不足

筋力不足

通常、膝への負担は膝周りの筋力によって軽減されています。ロードバイクでもそれは同じ。そのため、筋力が足りないと負担をサポートしきれず、膝の痛みが生じてしまうと考えられます。

また、筋力のバランスも要因のひとつです。ロードバイクで起こる膝痛の疾患を見ても分かる通り、ペダリングに必要な筋肉は複数に及びます。ペダルが上がってきたときにスムーズに動かすには大腿四頭筋を使いますし、踏み込みの力はハムストリングや大殿筋によるもの。またペダルを上げるときには、腸腰筋も大切になります。これらの筋力がバランス良くついていないと、どこかに負担が集中することも。

筋力不足で起こりやすい膝疾患

・大腿四頭筋炎
・下腿三頭筋の炎症

 

原因2:筋肉が硬い

筋肉と筋膜

筋肉は、筋内膜(Endomyslum)、筋周膜(Perimysium)、筋外膜(Epimysium)と筋膜によって3段階に束ねられている

「身体が硬いじゃなくて?」と思うかもしれませんが、筋肉の硬さです。「”筋肉が硬いと膝痛が起こる”を防ぐ4つの実践ストレッチ」でも詳しく触れていますが、”身体が硬い”は関節の可動域の問題。一方、”筋肉が硬い”は筋膜の癒着や筋肉の線維が短くなることを指します。このような問題があると、筋肉は常に収縮した状態が続くことに……。そのため、オーバーユースはもちろん、マルユース(誤使用)を起こしやすいやすいのです。

筋肉が硬いと起こりやすい膝疾患

・腸脛靭帯炎
・鵞足炎

原因3:関節のアライメント不良

アライメントとは「配列」や「整列」のことで、整形外科では股関節、膝関節、足関節を結ぶレッグラインを指します。このラインが正常でない、つまりO脚やX脚だと、自転車に乗っていなくても膝の痛みを起こしやすいのですが、ロードバイクにおいても問題が発生。

そもそも、膝はねじれに弱い部位なのですが、O脚やX脚だと正しく自転車を漕いでいても、膝にねじれが加わってしまいます。

X脚とO脚

アライメント不良で起こりやすい膝疾患

・膝関節が外旋しているO脚だと腸脛靭帯炎
・内旋しているX脚だと鵞足炎

 

ロードバイクで起こる膝の痛みへの対処法

ここであげた膝が痛くなる疾患の多くは、ロードバイク中やその直後に起こるため、その痛みを和らげる方法や出にくくする方法を探している人は多いはず。そんな人は、次のことを試してみてください。

 

アイシング

膝のアイシング

ご紹介したように、ロードバイクで生じる膝の痛みのほとんどは炎症。そのため、冷やすことが痛みを和らげるのに効果的です。ロードバイク直後には、氷嚢や保冷剤で痛みが生じている箇所を冷やすようにしましょう。

ただ、これは急性期の処置。しばらくしても痛い、慢性的に痛い場合は温めることが必要なので、そこを間違えないよう注意してください。

 

湿布

膝痛を鎮める湿布

消炎鎮痛作用のある湿布も有効です。炎症による痛みを早く鎮める効果を期待できます。「冷湿布でアイシングと一石二鳥!」と考える人がいるかもしれませんが、ヒヤッとした感覚があるだけで、湿布でアイシング効果は得られませんのであしからず。

 

サポーター

膝を安定させることで靭帯へのダメージを抑えることができます。ですので、ロードバイク中は膝を固定するタイプのサポーターがおすすめ。各メーカーから用途や疾患に合ったものも出ているので、あなたの膝が痛む箇所に合わせて選ぶと良いでしょう。

また、ロードバイク後少ししたら、保温用のサポータでリカバリーを図るのもひとつの方法。温めることで血流が改善するため、筋肉の疲労回復を早める効果が期待できます。

 

テーピング

膝痛のテーピング

サポーター同様、膝を固定する意味もありますが、筋肉をサポートすることにも有効です。その効果を発揮するのが、キネシオテープ。筋肉のサポートや血行促進による筋肉疲労の早期回復を目的としたテープなので、ロードバイクによる膝の痛みにはピッタリです。

また、キネシオテープの中でも、KTテープという合成繊維100%のものも登場。従来の綿素材のテープに比べ、伸縮性や弾力性、粘着性に優れているとのことで、より高いパフォーマンスを目的に作られています。

 

ストレッチ

原因として筋肉の硬さも考えられるため、膝痛の緩和にも予防にもストレッチは欠かせません。ただ、ロードバイクの前後でストレッチの内容が異なります。

ロードバイク前は、体を大きく動かす動的ストレッチ。ラジオ体操がその代表例と言えるでしょう。一方、ロードバイク後に行うべきは、筋肉を限界ギリギリまで伸ばす静的ストレッチです。伸びた状態を20~30秒キープするといった、いわゆる一般的なイメージのストレッチがこちらになります。もちろん目的も異なり、動的ストレッチは筋肉を伸ばして関節の可動域を広げたり、体を温めてけがをしにくくする準備運動。静的ストレッチは体の循環を良くし、筋肉の疲労をとることが目的です。この二つをしっかりやることが、膝痛予防の大前提とも言えるでしょう。

ロードバイクで疲弊しやすい筋肉にアプローチする、静的ストレッチの一例をご紹介しておきます。

大腿四頭筋の静的ストレッチ方法

1、立った状態で痛みのある方の膝を曲げ、足の甲を手で持ちます。

2、手に持った足のかかとを、お尻に引き寄せましょう。この状態で20〜40秒。

3、壁などに手を当て、バランスを安定させても構いません。

大腿筋膜張筋の静的ストレッチ方法

1、タオルを用意し、仰向けに寝そべります。

2、痛みのある足にタオルをかけたら、反対の手でもち足を内側に倒していきます。

3、さらに足をタオルで頭の方に引き寄せ、ここで20〜40秒。

4、膝が曲がったり背中が浮いたりしないように注意しましょう。

ハムストリングの静的ストレッチ方法

1、足を伸ばして座り、片方の足は折りたたむように膝を曲げます。

2、股関節から身体を折りたたむように前屈し、20〜40秒キープ。

3、背中が丸まったり、伸ばした足の膝が曲がらないようにするのがポイントです。

鵞足筋の静的ストレッチ方法

1、座った状態で足を45°に広げ、痛みのない方の膝を内側に曲げます。

2、股関節を折り曲げるように背筋を伸ばしたまま前屈。そこで20〜40秒。

3、伸ばした足が内側に倒れないように注意しましょう。

大殿筋の静的ストレッチ方法

1、椅子に浅く腰掛けます。

2、痛みのある方の足の足首を反対の足の膝上に乗せます。

3、乗せた足の膝を下に押しながら、股関節を折り曲げるように身体を倒し、20〜40秒。

4、背中は曲がらないように、お尻は浮かないようしましょう。

膝が痛くなったら、病院の受診とロードバイク前後のケア!

膝の痛みのチェック方法や対処法を紹介しましたが、まずはどこが悪いのかを正しく知る必要があります。そのため、検討をつけるにはセルフチェックもいいですが、早めに整形外科を受診しておきましょう。

また、膝の痛みが再発しないようにするには、ロードバイク前の動的ストレッチと走り終えた後の膝のアイシングを徹底してください。これでかなり痛みが緩和されるのではないかと思います。

 

 

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