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膝からポキポキ、パキパキと弾けるような音や、ギシギシ、ミシミシと軋むような音が鳴っていませんか? 膝を曲げ伸ばしたとき、歩き始めたときなど、様々なシチュエーションで膝から鳴る音。これは何かの病気なのかと、不安になりますよね。
この記事では、音のタイプ別に考えられる原因や疾患、治療法を、膝の専門医が解説。中には放置NGのものもあるため、不安であれば早めに受診するのが望ましいでしょう。あなたの膝の音、本当に大丈夫ですか?
膝が「ポキポキ」「パキパキ」と鳴る
手の指を鳴らしたときのような、やや乾いた音。膝の音の中でも、覚えのある人は一番多いのではないでしょうか。それには、次のような原因が考えられます。
疾患ではない膝の音「キャビテーション」
屈伸時に膝で鳴る音「ポキポキ」や「パキパキ」。その原因として「キャビテーション」が考えられます。キャビテーションとは、液体の中に圧力差が生じることで気泡が生じたり、はじけたりする現象。膝で鳴る音も、滑液(かつえき)という液体に満たされた膝関節内で起こるキャビテーションが原因の一つと言われています。実際、2015年にカナダの研究者が行った実験で、手の指の関節を鳴らすと、一時的に関節内(滑液内)に空洞ができていることが確認されたそうで、この説が有力とされています[※1]。そのため、音の頻度が少ない場合や、痛み・こわばりなどの違和感が全くない場合は、ひとまず大慌てをする必要はありません。
しかし、思わぬ疾患の前兆かもしれないのが膝の音。それは、とある調査結果にも垣間見えます。その調査は、膝のポキポキ音と、変形性膝関節症という疾患の発症率との関連を調べるというもの。対象となった3,495人のうち、ポキポキ音が全くない人に対し、まれにある人でも1.5倍、いつもある人では3.0倍も、変形性膝関節症という疾患の発症リスクが高かったというのです[※2]。
膝の内側に痛みを伴う「タナ障害」
膝関節の周りには、関節包(かんせつほう)という袋のような組織があり、それについているヒダ状の組織を滑膜(かつまく)ヒダと言います。滑膜ヒダはいくつかありますが、膝の内側にあるものがタナ(棚)。関節内視鏡で見ると棚のように見えることから、そう呼ばれるようになりました。
タナは出生時に半数の人から消失すると言われていますが、それが残存している場合に起こり得るのが、タナ障害です。タナが残存すること自体は問題ではありません。問題なのは、膝のお皿の膝蓋骨(しつがいこつ)と、太ももの大腿骨の間にタナが挟まったような状態になったとき。タナが擦れて炎症を起こすと、膝の屈伸に伴い、パキパキといった音や痛み、引っかかり感が現れます。主な原因は、オーバーユース(使いすぎ)。膝の曲げ伸ばしが繰り返されたとき、膝蓋骨と大腿骨の間にタナが挟まりやすくなるのです。この疾患の音以外の症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 膝の内側に痛みが出る
- 膝が引っかかったような感覚になるキャッチング現象が起こる
タナ障害の治療法
オーバーユースが原因であることが多いため、運動量を抑えて安静にします。さらに、抗炎症作用のある薬剤を投与し、炎症や痛みを抑える保存療法が一般的。そうした保存療法で効果が見られず、日常生活に支障が出るほど症状が悪化してしまった場合、手術によりタナを摘出することもあります。
膝が「ミシミシ」「ゴリゴリ」「ギシギシ」と鳴る
何かが擦れたりぶつかったりしているような音が膝から鳴っていたら、要注意。放っておくと危険なものもあるため、思い当たる部分がないか、しっかりチェックしてみましょう。
膝にこわばりや痛みが生じる「変形性膝関節症」
膝の音で特に要注意なのが、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)です。膝関節は、太ももの大腿骨(だいたいこつ)と、すねの脛骨(けいこつ)が連結する部分。これらの骨が接する部分を覆っている硝子軟骨(しょうしなんこつ)は、外からの衝撃を吸収したり、骨の動きを滑らかにしたりする役割を果たしています。
変形性膝関節症は、この硝子軟骨がすり減る進行性の疾患で、進行とともに様々な症状が現れます。大腿骨と脛骨がぶつかり合うようになると、ミシミシ、ギシギシと音を立てることも。末期になると、さらに骨の損傷が拡大。膝関節は変形し、歩行が困難になったり、安静時でも膝に激しい痛みが生じたりするなど、日常生活に大きな支障が出てしまいます。膝の音以外では、下記のような症状が特徴的です。
- 膝にこわばりや痛みが出る
- 階段の昇り降りがつらい
- 膝に水がたまる
変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症は進行性ですが、初期段階であれば、その進行を遅らせることは可能です。消炎鎮痛薬やサポーターなどを利用して痛みを抑えつつ、筋トレやストレッチなどを適切に行い筋力をつける保存療法が一般的。変形性膝関節症の初期においては、運動療法が非常に効果的とされているためです。また、変形性膝関節症の痛みに対しては、ヒアルロン酸注射による治療が広く用いられています。
こうした保存療法で効果が見られず、膝関節の変形が進行してしまった場合、自身の骨を部分的に切り取って膝関節のバランスを取る手術(骨切り術)や、膝関節を人工のものにする人工膝関節置換術を検討することになります。
[詳細]【変形性膝関節症の治療法まとめ】自分に合った方法で改善を
膝のお皿に痛みと引っかかり感がある「膝蓋大腿関節症」
膝蓋大腿関節(しつがいだいたいかんせつ)とは、膝のお皿である膝蓋骨と、太ももの骨である大腿骨からなる関節のこと。これらの骨が接している部分には、スムーズな膝の曲げ伸ばしをサポートする軟骨があります。この軟骨がすり減り、膝蓋大腿関節に様々な異常をきたす疾患が、膝蓋大腿関節症です。
膝蓋骨と大腿骨が直接ぶつかり合うと、膝の痛みに加えて、ゴリゴリと音が鳴ることがあります。スポーツの衝撃で膝蓋骨が脱臼や亜脱臼を繰り返すことや、加齢によって膝蓋骨にかかる負担が増加し、骨が変形することが原因です。音以外で生じやすい症状としては、以下のようなものがあります。
- 階段の昇り降りで膝に痛みが出る
- 膝蓋骨周辺が腫れる
膝蓋大腿関節症の治療法
運動量を抑えて安静にすること、関節内へのヒアルロン酸注射、鎮痛剤の投与といった保存療法が基本です。それらで改善が見られなかったとき、軟骨がすり減って関節が変形してしまっているときなどには、膝蓋大腿関節を人工のものと置き換える手術が行われることもあります。
音に加え鈍い痛みや違和感を伴う「膝蓋軟骨軟化症」
膝蓋軟骨軟化症(しつがいなんこつなんかしょう)は、膝のお皿である膝蓋骨の裏側にある軟骨が変性を起こし、軟らかくなる疾患。スポーツをしている15〜20歳の女性によく見られます。膝の鈍い痛みに伴って、膝蓋骨が引っかかったような違和感が現れたり、軟骨が他の骨と擦れてゴリゴリと音を立てたりする症状が特徴です。その他の症状としては下記のようなものがあります。
- 階段の昇り降りで膝に痛みが出る
- 膝蓋骨に圧痛(押すと痛むこと)がある
生まれつき関節が緩い人や膝蓋骨の形に異常がある人に発症しやすく、女性ホルモンの影響で関節が緩みやすい女性に多いとされています。また、ジャンプやランニングなどにより、膝蓋骨に負担がかかり続けることも原因の一つです。
膝蓋軟骨軟化症の治療法
激しい運動を控えて安静にします。痛みの緩和には、NSAIDs(エヌセイズ)という非ステロイド系抗炎症薬の処方が一般的。先天性の原因が多く治療は難しいと言われていますが、軽度であればテーピングやサポーターを使用することで対処できます。まれに、関節鏡を用いて膝蓋骨の裏側の軟骨をきれいに整える手術が行われることもあります。
膝が「ピキッ」「コリッ」と鳴る
ピキッ、コリッという、何かが破裂したような音。考えられる原因は何なのでしょうか。
膝に引っかかり感や痛み「半月板損傷」
半月板(はんげつばん)が損傷している場合も、膝から音がする可能性があります。半月板とは、アルファベットの「C」のような形をした軟骨のことで、膝関節の内側と外側に一つずつ存在します。半月板の損傷はスポーツ中に起こることが多いですが、加齢によって傷つきやすくなることも原因の一つ。高齢になればなるほど、日常生活の軽微な負担でも半月板を損傷しやすくなります。
半月板は損傷時に欠けたり断裂したりしますが、その欠片が膝関節に挟まった場合、膝の音や可動域制限(一定以上、動かなくなること)を始めとする様々な症状が現れやすくなります。
- 膝に痛みや腫れが起きる
- 膝に水がたまる
- 膝の屈伸時に引っかかったような感覚になる(キャッチング現象)
- 膝の曲げ伸ばしができなくなる(ロッキング現象)
半月板損傷の治療法
まず考えられるのは、手術ではなく保存療法。ヒアルロン酸注射やテーピング、サポーターなどを用いて痛みや負担を軽減しつつ、自然治癒を待つ方法です。ただ、自然治癒に必要な血液は、半月板の外縁(辺縁)にしか流れていません。そのため、半月板の内縁 を損傷した場合は自然治癒を見込めず、手術の対象になることが多いでしょう。また、保存療法を続けて効果が見られない場合も手術が適応されます。
手術方法には半月板切除術と半月板縫合術の2つがあり、切除術は主に半月板の内縁 、縫合術は主に半月板の外縁(辺縁)に対して行われます。
[詳細]【半月板損傷の2つの手術方法】回復期間や費用に違いはあるのか
膝が鳴るのは放置NG!
膝が鳴る原因や疾患に、心当たりはあったでしょうか? この中で特に注意が必要なのが、変形性膝関節症です。潜在的な患者を含めると、3000万人の日本人が患っているとされていること、そして進行性の疾患であることが何よりの理由。最悪の場合には、膝関節を人工のものと取り換えることになる疾患です。また、半月板や靭帯の損傷など、別の疾患が引き金となって変形性膝関節症を発症してしまう可能性もあります。
痛みや違和感を併発したときはもちろん、この記事でご紹介した疾患のどれかに心当たりがあれば、早めに整形外科を受診するのがベストと言えるでしょう。
参考文献
※1
「Real-Time Visualization of Joint Cavitation」Gregory N.他 2015 Apr 15;10(4)
※2
「Subjective Crepitus as a Risk Factor for Incident Symptomatic Knee Osteoarthritis: Data From the Osteoarthritis Initiative.」Lo HG他 Arthritis Care Res 2018 Jan; 70(1):53-60